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舌はないけど

(36)遺伝子検査 私の「情報」 未来の礎に

 切除手術から四年が過ぎ、すこぶる体調は良いのですが、肺の多発転移は数も増え、無症状ながら想定内のスピードで大きくなっています。腺様嚢胞がん(ACC)に有効な治療法がない中、薬物療法科の先生が「保険適用になったがん遺伝子パネル検査を受けてみたら」と勧めてくださいました。

遠路、遺伝子パネル検査のため千葉へ

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 本欄右の記事にもありますが、この検査は、私のがん細胞の遺伝子を調べて、がんの特徴や、適切な治療、治験などの情報を専門家が検討してくれるもの。始まったばかりで、遺伝子の異常が判明しても治療に直結することは少ないのですが、それも理解した上で、受けることにしました。

 ただ、懸念がありました。もし、私に遺伝性腫瘍の可能性があれば、妹たちにもその可能性が出てくる。いきなり「あなたはがんになりやすい」という宣告は、とてもつらいと思うし、専門家のサポートもまだ足りないので、妹たちの理解なしには検査を受けられないと思っていました。そうした説明をすると、妹たちは「なんの迷いもなく検査を受けてきて」と送り出してくれました。

 検査は、今年八月、千葉県の国立がん研究センター東病院で行いました。担当の先生と面談して、検査についての説明を受け、同意書にサインをしました。手術で切除した腫瘍の一部を愛知県がんセンターから東病院を通じて、アメリカの検査会社に送るのです。

 診察時に先生が「舌を出してみてください」と言うので、私が口を大きく開けたら「あまり動かない? えっ、あっ、ないのか」。それまで私が上手にしゃべっていたようで、舌の一部切除だと誤解を招いたみたいです。楽しいやりとりでした。

 一カ月以上たった先日、結果を聞きに再び千葉へ。今回検査した三百二十四個の遺伝子に変化はなく、遺伝性腫瘍でもないことが分かりました。想像通りでした。有効な治療や治験などの情報に結びつかなかった、というと残念な結果だと思われがちですが、今後、無駄な治療や検査をせずに済むという利点もあります。

 私のゲノム情報を、国立がん研究センター内のゲノム情報管理センターに提供する同意書にもサインしました。たとえ今の自分の治療に結びつかなくとも、医療の発展に貢献できるかもしれないし、検査を受けて良かったと思います。ACCに対しても希望の道が開かれることを期待しています。(荒井里奈)

 

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