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舌はないけど

(34)希望の光 未来の看護師へエール

希望の光

未来の看護師へエール

 先週、愛知県豊川市の県立宝陵高校で出前授業を依頼され、衛生看護科の学生さんたちにお話をしてきました。三年生で、これから二年の専攻科を経て、看護師になる方たちです。

 日進月歩の医療の世界で、最新知識や看護技術を学び、患者を支え続ける看護師は大変な激務。私も入院中、つらい時にずっと背中をさすってくれたり、さりげない言葉でいたわってくれたりした姿を、はっきりと覚えています。そんな尊い仕事を志す彼らは、私たちにとって希望の光です。二コマ、九十分の時間で何を伝えればいいかを考えました。既に病院実習も経験しているとうかがい、私も体験重視にしました。

口の中を見て、さわってもらう体験学習=愛知県豊川市の県立宝陵高校で

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 十三時間に及んだ手術や、放射線治療のつらさ、復職を目指したリハビリ、転移と抗がん剤治療のための退職といった四年間の体験を話した後、みんなに口の中をさわってもらいました。

 舌や周辺部分の一部を切除した痕は、おなかの筋肉を皮弁として移植してあります。これがないと、口腔(こうくう)内に穴ができて、食べたものをのどに運ぶことができないし、発声もできません。舌を切除した患者に接する機会はめったにないだろうから、人体の仕組みを考えるきっかけになってもらえればと思いました。昨年、歯科衛生士養成の専門学校で話した時も口の中を見てもらって、その後の質問タイムが活発になった経験がありました。

 胃ろうを使って飲み物を摂取する様子も披露しました。職場復帰のためには、スムーズに栄養補給できる手段が不可欠だったので、選んだのが胃ろう。職場でたくさんおしゃべりする中で、口やあごの筋力が回復し、口から食べられるようになったという経験を、学生さんたちは興味深く聞いてくれました。入院中の気持ち、嚥下(えんげ)リハビリなどについてたくさんの質問をいただき、ありがたかったです。

 私は入院中から、職場復帰の目標を周囲に伝え、医療スタッフがそれを全面的にバックアップしてくれたことで、ここまで回復できたと思っています。病棟の看護師が患者と接するのは入院中だけだけど、患者にとっては退院後が本当の闘い。だから退院後の目標について話し合い、一緒に考えてくれる看護師になってほしい。講義がその一助になればと思います。

    ◇

 あらい・りな 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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