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舌はないけど

(31)焦らず就活 患者も障害者も多様

 地域で長く生活できるがん患者が増えて「就労支援」という言葉をよく聞くようになりました。

毎月通うハローワーク=岐阜県高山市で

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 私も、肺に多発転移をかかえたステージ4の患者ですが、現在は無治療で経過観察中。いたって元気なので、失業保険給付が切れる前に就労をと考えていますが、なかなか難しいものです。

 毎月、失業保険給付の手続きと求人情報の閲覧のため、岐阜県高山市のハローワークに行きます。職員の方から「体調はどうですか」「前回から今日までに働いていませんか」「気になる職場はありますか」といった質問を受け、障害者専用求人、一般事務職求人、軽作業求人の一覧をもらいます。

 私は四級の障害者手帳をいただいていて、障害者枠で就労ができます。しかし、それも難しい面があります。無治療とはいえ、毎月最低二回、多いときには五回、名古屋の病院に行かねばならず、それはすべて平日。この先、どんな症状が出て、どんな治療が必要になるかも予測できません。それに加え、舌を切除したことで電話応対の仕事は難しいし、食事に時間がかかるし、治療の影響で重い物も持てません。何より「完治の見込みのないがん患者」なので、「先々迷惑をかけるかも」と考えると、正社員の求人にはなかなか応募できないのです。

 障害の内容も変化します。私は二年前に「疾病によるそしゃく機能の著しい障害」として障害者手帳をいただきましたが、今は言語障害の方が不便です。ら行が発音できないので、自分の名前「あらい・りな」を伝えるのも大変です。

 周りのがん患者さんたちを見ても、食道がんで放射線治療をしたら嚥下(えんげ)機能障害になって胃ろうをつくったけれど、外科手術をしていないために障害認定されないという方もいます。術後何年もたってからようやく言語障害で認定されたという方もいます。住んでいる場所や診断書を書く医師によって、認定にもばらつきがあるようです。県庁所在地などのハローワークには、がん患者の就職を支援する職員が配置されていますが、高山にはいません。

 いろいろな患者、障害者が暮らしやすい社会を目指して、私のささやかな体験を発信しつつ、焦らずに就活していこうと思います。(荒井里奈)

 

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