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舌はないけど

(29)胃ろうの実演 見ることが理解の早道

 「胃ろうを見たことある人、いますか?」−。参加者二十数人の中で、私の問いかけに手を上げた方は数人でした。私は心の中でニヤリとして、温めてきた作戦を実行しました。「今から胃ろうでお茶を飲みます」

 先月、名古屋市での市民向け勉強会で講師を務めたときのこと。「テーマはご自由に」と言われ、自分の闘病経験や死生観について、じっくりお話をしました。その中で、胃ろうの実演を披露したのです。

おなかの接続口にチューブを付けて、胃ろうの実演=名古屋市内で

写真

 胃ろうにもさまざまなタイプがありますが、私のはバンパー・ボタン型といって、白いボタンのような接続口がおなかについています。Tシャツをめくって「私の腹ピアスです」と、接続口を見てもらい、チューブを装着しました。そしてコップに入ったお茶をシリンジ(針のない注射器)で吸い上げて、チューブにゆっくりと流しました。

 参加者からは「接続口は交換するの?」「満腹になるの?」「のどは潤うの?」など多くの質問があり、うれしくなりました。はい。半年に一度ぐらい接続口を取り換えます。胃ろうで栄養剤を注入すれば、空腹感はなくなるし、水分を取ればのどの渇きは止まります。人体は神秘的ですね。

 前にも書きましたが、私が胃ろうをつくったのは、手術後、七カ月に及んだ入院生活の終盤でした。職場復帰して忙しくなってもスムーズに栄養補給できるようにしようと思ったからです。退院後、口から食べる練習を続けつつ、どこへ行くにもチューブとシリンジを持参しました。私は人前で使うことに抵抗がなかったので、フードコートやファミリーレストランでチューブをつなぎ、胃ろうで飲み物を入れたりしてきました。周囲から、じろじろ見られることはありませんでした。

 でも、人目を気にして外出をためらう人もいます。また、胃ろうを知らない人は「かわいそう」とか「どんな言葉かけをすればいいか分からない」と思うかもしれません。実際に見ていただくことが理解の早道だと考え、今回の実演を思いつきました。

 終末期の延命治療のイメージが強い胃ろうですが、私のように舌を切除した患者が社会復帰するには、とても便利な補助手段です。多くの方に知っていただき、胃ろう使用者がもっと気軽に外出や食事を楽しめるようになればと願っています。

 

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