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舌はないけど

(25)もしバナゲーム 望む最期に話が弾む

 私が関わっている岐阜県高山市のがんサークル「Owls(オウルズ)」で先日、「もしバナゲーム」を使って、死について考えるイベントをしました。

 千葉県の亀田総合病院が開発したゲームで「もしものための話し合い」の略。人生の最期にどうありたいかを話し合うきっかけにするのが目的です。三十五枚のカードに、終末期に関係する「希望」が書かれています。「私を一人の人間として理解してくれる医師がいる」「尊厳が保たれる」「あらかじめ葬儀の準備をしておく」など、生活全般に及ぶ内容です。

「もしバナゲーム」で使うカード。私にとって大事なのは、この3枚

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 今回は、四人一組でやる形にしました。手元に配られた五枚のカードを交換しながら、自分の大切にしたいものを残し、最後にその理由を説明します。十六人の参加者は全員女性で、年齢や立場はさまざまでしたが「自分が余命半年から一年と言われた」という設定で、カードを選んでいきました。

 一番人気は「家で最期を迎える」で、「あのカードが欲しかった」と悔しがる声も多く聞かれました。私たちスタッフが「飛騨では在宅医療があまり進んでいないし、介護保険のサービス、家族の協力、自宅のバリアフリーなど、解決しなくてはいけないことがいろいろありますね」と説明すると「知らなかった」という声がしきり。家で死ぬことの難しさをテーマに、話が弾みました。

 皆さんが考えてはいるのに、なかなか話題にできないのが「死」。私はがんになって強く意識するようになりましたが、周囲に話そうとすると「縁起でもない」となかなか聞いてもらえません。こうしたタブーが社会に残っているために、準備不足になってしまうことも多いのではないでしょうか。

 国も「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という言葉を広げようと努力しています。人生の最終段階で、自分がどんな医療やケアを望み、何を希望しているかを、前もって家族や医療スタッフらと継続的に話し合って、その人の思いを共有していこうという取り組みです。その普及に「もしバナゲーム」は、とても有効だと思います。

 このゲームで、今の私が選ぶとしたら「親友が近くにいる」「ユーモアを持ち続ける」「痛みがない」の三枚です。親友に囲まれ、にぎやかに、私らしくユーモアを忘れずに。そして、痛みはすべての思考をぶっ飛ばすので、取り除いてほしいと思っています。

     ◇

 荒井里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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