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舌はないけど

(23)奈良・興福寺で 寄進の瓦に願い込め

 先日、両親と一泊旅行で奈良に行きました。何度も訪ねている場所ですが、私の抗がん剤治療が終わったら行きたいと、父のたっての希望でした。私にとっては、昨年十月に落慶した興福寺の中金堂を見るのが一番の目的でした。

 仏像が大好きな私は、がんになる前も、なってからもたびたび興福寺を訪れ、再建中の中金堂の瓦を寄進してきました。二年半前に訪ねたときは、切除手術後の長期入院から退院して一カ月ほど。職場復帰の前でした。

今回も瓦を寄進。願いごとはやっぱり「病気平癒」=1月、奈良市の興福寺で

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 まだ、口から食べられず、胃ろう用の栄養剤をキャリーバッグに詰めての一人旅。瓦に書く願いごとは「病気平癒」にしました。一緒に闘病している仲間たちへの思いも込めて書きました。

 その時の気持ちを思い出しながら眺めた中金堂は、雄大で色鮮やかでした。平城京の当時そのままに復元した工事は、二十年を要したそうです。重機もなかった時代に、よくぞこんな建造物ができたものです。この二年半に、残念ながら私のがんはあちこちに転移してしまったけれど、こうして元気に旅行することもできる。支えてくださる方たちを思い浮かべながら、手を合わせました。

 御朱印をいただいていたら、瓦の寄進をまだ受け付け中でした。聞けば、これから建てられる回廊に使われるとのこと。せっかくなので、また寄進することにしました。

 今の私の気持ちとしては、がんは治すものではなく、うまく付き合っていくもの。その意味では願いごとは「現状維持」とすべきかとも思ったのですが、分かりにくいのでやっぱり「病気平癒」にしました。

 毛筆で書いていたら、係の男性に「だれが病気なの?」と聞かれたので「私です」と笑顔で手を上げました。私が病人に見えなかったのか、キョトンとされていたので母が「がんなんです」と説明したら、散華(ハスの花びらを模した紙で、法要などでまくもの)を三枚取り出して、こうおっしゃいました。

 「これは、東金堂のお薬師さんの法要のときに使った散華です。これ、持って行って。また、お参りにおいでね」

 わ、そんな特別な散華を。ありがとうございます。今回寄進した瓦が回廊の屋根にのる時も必ず見に来よう、と心に誓った旅となりました。

 

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