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舌はないけど

(21)マギーズ東京 仲間と訪れ、心を共有

2年前に訪ねたときの「マギーズ東京」。楽しくて時のたつのを忘れた(左が荒井さん)=東京都江東区で

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 昨年末の薄曇りの朝。東京・豊洲の「マギーズ東京」の前でタクシーを降りると、庭仕事をしていたボランティアの男性が走り寄ってきて、私たち二人の荷物降ろしを手伝ってくれました。「里奈ちゃん、元気?」とハグ付きで、一年半ぶりの来訪を歓迎してくれました。

 二〇一六年にオープンした「マギーズ東京」は、英国のマギーズセンターの日本版。がん患者や家族などが悩んだり孤独を感じたりしたときに訪れ、自分を取り戻す場所です。

 私は、休館日にどうしても外観を見たくて訪ねた時も含めると、三度目。闘病仲間のSさんは二度目の来訪でした。さしあたり悩みや孤独感はないけれど、前から「また行きたいねー」と話し合っていて、東京での患者イベントに参加したのを機に足を延ばしました。

 来たくなる理由の一つは、建築のすばらしさ。平屋の二棟は、木をふんだんに使い、光を隅々にまで取り入れる設計です。美しい庭もあります。そして、予約なしに無料で、スタッフの看護師や臨床心理士が話を聴いてくださる。こんな場所はなかなかありません。

 一枚板の大きなテーブルを囲んでコーヒーをいただきながら、患者会の運営について看護師さんとお話をしました。相談活動をしていると、保険外の治療について尋ねられ、答えに困ることがありますが、マギーズ東京では「肯定も否定もしない。ただ、看護師として医学知識で分かることは伝える」というスタンスだそうです。

 前回ここへ来た時は、仲間のご夫婦と一緒でした。告知、肺への転移など、自分の闘病を客観的に振り返る機会になり、気づけば三時間が過ぎていました。何て居心地のいい、やさしい空間だろうと感激しました。

 今回の来訪は、Sさんと一緒に行けたことが一番の喜びでした。愛知県がんセンター中央病院で、お互いに一番つらい時期を乗り越えた仲間。考え方もよく似ています。余命宣告を受けてもなお、自分らしくしなやかに生きる彼女がいるから、私も前向きに頑張れました。

 帰りの新幹線で、Sさんと語り合いました。マギーズは「がん患者」ではなく、一人の人間としていられる場。心が折れそうなときも、ただ話を聴いてもらい一緒にいてもらえる場。東京だけではなく、全国にあればいいのにと、痛切に思います。

            ◇

 荒井里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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