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舌はないけど

(19)記念の一枚 副作用で思わぬ“出家”

 そり上げた頭の写真、びっくりされたかと思いますが、出家したのではありません。

抗がん剤治療の一番の思い出になったこの一枚=8月、愛知県がんセンター中央病院で

写真

 八月、抗がん剤治療の四クール目で入院する前に、かみそりを当てました。頭の形が意外にきれいで、うれしくなりました。五カ月・六クールの治療の思い出として、大切な写真です。

 私は仏像が好きで、あちこちのお寺に出掛けたり、仏教の勉強をしたりしていて、お坊さんの頭にあこがれがあり「一生に一度はやってみたい」と思っていました。だから、抗がん剤(シスプラチンとドキソルビシン)の副作用で髪の毛が抜けることに、悲しさはありませんでした。ただ、面倒でした。抗がん剤投与の二週間後から、髪がごっそりと束になって抜けました。お風呂で抜けた毛を拾っていると湯冷めしてしまうほど。洗面台にペーパータオルを敷き詰め、髪を手ぐしでといたりしましたが、すべて抜けるわけではなく、まばらに残り、当時金髪ショートだった私は、ヒナ鳥のような頭になりました。それで、そり上げたわけです。

 外出時は、ウイッグを使いました。治療前に、販売店のサロンを予約し、試着して購入し、自分に合わせて前髪をカットしてもらいました。ネットでも買えるけれど、自分にぴったりのものを選ぶには、試着できて良かったと思います。人工毛100%で値段は一万円以下。かぶり方や手入れ法も丁寧に教えていただき、不器用な私もうまく使うことができました。

 私のように髪に未練のないタイプは少ないでしょうが「アピアランス(外見)ケア」の大切さは、痛感しています。ウイッグだけでなく、好きな服を着るだけで気持ちが上がり、メーキャップがうまくできればご機嫌になるし、きれいなネイルなら自信を持ってふるまえる。病気で見た目にダメージがあっても、癒やされ、自信を取り戻すことができる。アピアランスケアの取り組みが、もっともっと広がってほしいです。

 また、脱毛は抗がん剤によっても違うし、個人差もあります。私の場合は、鼻毛などは全部抜けたけど、まゆげとまつげは半分だけでした。治療前にできる準備はして、後は受けて立つという構えでいいのかなと思っています。

 放射線、抗がん剤と治療続きの一年でしたが、新しい髪の毛も二センチほどに伸びてきました。来年はどんな髪形にしようかな。

            ◇

 荒井里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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