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【病院再編を問う】国が重点支援指定 滋賀・湖北の4病院 医師の疲弊解消急ぐ

緊急か否か 役割分担を協議

 厚生労働省が病院の再編を重点的に支援する五区域の一つに一月、滋賀県湖北区域(長浜、米原両市)の四病院が選ばれた。国の技術的な助言や財政支援を受けながら、地元の医療関係者らが重複する医療機能や病床(ベッド)の再編に向けた議論を加速させる。医師の働き方改革の完全実施が二〇二四年四月に迫る中、医療の効率化と医療提供体制の確保の両立に、どう道筋をつけるのか。現状と課題を探った。(相馬敬)

外来診察の順番を待つ人たち=滋賀県長浜市の市立長浜病院で

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 四病院は長浜市に集中している。その中核が市立長浜病院(六百床)と、北西へ一・五キロほど離れた長浜赤十字病院(五百四床)だ。二月下旬、市立長浜の内科、外科の外来診療の待合場所はごった返していた。

 関係者によると、両病院とも外来患者は一日千人ほど。市立長浜の医師らは午後二時ごろまで外来患者に対応した後、今度は入院患者の診察、手術をこなす。その傍らで当直も。こうした厳しい勤務によって、救命救急や集中治療に対応する「高度急性期」や、緊急性の高い「急性期」の医療提供体制を維持してきた。

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 長浜赤十字も市立長浜と同様、高度急性期と急性期を担う総合病院だ。診療科も似通っている。市立長浜に通う四十代の女性は「地域に二つの総合病院がある安心感は大きい」と話す。ただ地方の医師不足は深刻だ。一八年度、市立長浜で小児科の常勤医が不在になった際は、長浜赤十字が入院患者の受け入れや小児救急に当たって乗り切った。

 医師の疲労は医療事故につながりかねない。市の研究会が一八年にまとめた報告書は「湖北の高度急性期、急性期医療を将来も堅持できるか、危機感を持っている。医師の疲弊を防ぎ、専門医を確保することが必要だ」と警鐘を鳴らす。

 国は「団塊の世代」が七十五歳以上になる二五年までに病床数を適正化し、再編や統合を促す「地域医療構想」の実現を目指す。一五年度に策定された滋賀県版の構想によると、湖北区域は高度急性期、急性期の病床を減らす一方、高齢化を踏まえてリハビリ向けの「回復期」を増やし、長期入院の「慢性期」を維持するとしている。

 県や市、病院関係者が参加して翌年度から始まった調整会議で合意したのは、市立長浜、長浜赤十字、市立湖北(百四十床)の三病院の一つに高度急性期、急性期の病床を集中させ、残る二つで回復期と慢性期を分担し合うこと。ただ、緊急時に備え、二病院には一定の急性期機能を持たせることも盛り込んだ。

 救急医療に周産期医療、がん診療…。焦点は機能が重複し、受け取る診療報酬額や実際の運用病床も同水準とされる市立長浜、長浜赤十字の役割分担だ。ともに高度急性期を担う力がある両病院の調整は難しい。設置主体も長浜市、日赤と別々で、運営の下敷きとなる法律も地方公営企業法、日本赤十字社法と異なる。会議関係者の一人は「『総論賛成、各論進まず』で、頭が痛い」と漏らす。

 こうした中、病院再編に関する国の重点支援区域に選ばれたことに対する期待は大きい。具体的な支援策は今後決まるが、病床の縮小規模に応じた補助金の交付や、今後見込まれる患者数、医療需要などのデータ提供、国の担当者による意見調整などが想定される。厚労省地域医療計画課の担当者は「調整は難しいかもしれないが、選定した区域をモデルに他区域に展開したい思いはある」と話す。

 二十四時間対応の高度急性期、急性期医療は当直が必要だが、二四年四月から医師の働き方改革が完全実施されれば勤務医の残業は規制される。ある会議関係者は「それまでに勤務のローテーションを組める環境を整えないと、大学の医局は医師を派遣しづらい」と懸念する。残された時間は、決して多くない。

    ◇

 地域医療構想と国の重点支援区域 病院機能の再編・統合を議論している全国339区域のうち、財政支援などを強化するエリアに選定されたのは、滋賀・湖北区域を含め、宮城2区域、山口2区域の3県5区域。湖北区域の市立湖北病院は、厚労省が昨年9月、「再編・統合の検討が必要」と公表した病院のリストに含まれている。

 

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