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【ホンネ外来発】私服姿の医師に好感  患者の緊張和らげる

 医師の服装といえば、真っ先に思い浮かぶのは白衣だろう。ただ、近年は白衣を着ない医師も増えているそう。医療機関での患者らの体験談を紹介する「ホンネ外来」に先日、「小児科医が私服で診察していて驚いた」という声が寄せられた。かつては「白衣の天使」などとも呼ばれた看護師の服装もカラフルに。医療現場の服装も、時代とともに変わっているようだ。 (平井一敏)

私服で診察する吉田医師(左)=名古屋市千種区のワイワイこどもクリニックで

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 投稿を寄せたのは愛知県の男性(32)だ。風邪をひいた娘(3つ)を近くの小児科医院に連れていったところ、診てくれた男性院長(56)は襟付きシャツにスラックス。表情もにこやかで「柔らかい印象だった」という。娘も「また行きたい」と話すほど落ち着いていた。

 院長は「少しでも子どもを怖がらせないように」と、十五年前の開院時から白衣なしで診察している。あまり白衣を着ない欧米の小児科医に倣ったという。茶色やグレーなどの落ち着いた色合い、こざっぱりとした服装を心掛けているといい「その辺のおじさんみたいな感じ」と笑う。

 名古屋市千種区の小児科医院長、吉田潤さん(65)も白衣を着ない。救急対応もある総合病院の勤務医時代は白衣を二、三着持ち、患者の血や消毒液などで汚れるたびに着替えたが、二〇〇二年の開業後は一度も袖を通していない。「子どもが泣かなかった、と保護者にも喜ばれる」と話す。

 医師の身だしなみに詳しい霞ケ浦医療センター(茨城県土浦市)の総合診療科長、栗原宏さん(45)によると、医師の服装に統一的な決まりはない。白衣を着ない医師が多いのは、小児科や精神科。精神科にかかる患者の中には、白衣を見ると血圧が上がる白衣高血圧症の患者もいるという。両科とも「医師の権威の象徴でもある白衣を着ないことで患者の緊張を和らげる目的がある」と説明する。

 そもそも医師が、もともと科学者が着ていた長袖のコート型の白衣を着るようになったのは、十九世紀後半の欧米が最初だ。それまでは、礼節を重んじて黒い礼服を着るのが一般的だった。医療行為自体も民間療法の趣が強かったという。

 しかし、病気を引き起こす病原体の発見といった医学の進歩で科学との垣根がなくなったことや、衛生意識が高まったことが、薬品などの汚れも目立ちやすい白衣の着用を後押しした。日本に入ってきたのは大正時代だ。

半袖Vネック人気

 白衣にも流行がある。一九六〇年代は半袖で丈が短い「ケーシー型白衣」が普及。米国の医療ドラマ「ベン・ケーシー」の主人公が着ていたのがきっかけだ。ここ数年は、国内外のデザイナーズブランドによるおしゃれな白衣が続々登場している。名古屋市瑞穂区に一昨年オープンした白衣専門店「プロフェッサーズラウンド名古屋店」には約三十種類が並ぶ。最近の人気は七〇年代に手術着として使われ始めた半袖、Vネックでカラフルな「スクラブ」だ。スクラブは英語で「ごしごしこする」の意。ポリエステル製で頻繁に洗濯をしても大丈夫であるため、この名が付いた。

 患者はどう受けとめているのか。栗原さんが一四年に茨城、新潟、東京の計五カ所で医師にふさわしい服装を尋ねたところ、回答した患者約五百人の大半が白衣を支持。年代が高くなるほどスクラブには否定的だった。医師と看護師らを見分けにくいことなどが理由のようだ。「医師の服装は患者との信頼関係に関わる」と栗原さん。「患者への印象を第一に考えて選ぶのが大事」と話す。

看護師 働きやすい服装に 日勤 夜勤 色分け勤務管理

 白いワンピースが定番だった看護師だが、男性看護師も増えた現在はパンツスタイルが主流だ。医師に倣い、色鮮やかなスクラブを着る看護師も増えている。

名古屋市瑞穂区の白衣専門店。手に持っているのはケーシー型とスクラブを合わせたデザイン=プロフェッサーズラウンド名古屋店で

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 一方で、ナースキャップをかぶった看護師はほとんどいない。キャップに細菌が繁殖して病気の感染源になる恐れが明らかになり、1990年代から多くの医療機関で廃止されたためだ。

 熊本市の熊本地域医療センターは、2014年度から勤務時間帯によって制服の色を変えている。残業時間を減らすのが目的で、日勤の看護師は赤、夜勤は緑のスクラブを着用。同センターには約200人の看護師がいるが、大平久美看護部長は「残業すると一目で分かる。定時で仕事を終わらせようという一人一人の意識が高まった」と話す。

 同僚や医師らも制服の色を見て、勤務終了が近い看護師には新たな仕事を頼まないように。患者から「まだ帰れないの」などと声を掛けられることもあるという。13年度の残業時間は1人当たり年約110時間だったが、18年度には約20時間に減少。20%を超えていた離職率も半減した。

 この取り組みは昨年、日本看護協会(東京)による働き方改革の先進事例表彰で最優秀賞に選ばれた。大平部長は「働きやすい職場になり、院内の雰囲気も明るくなった」と喜ぶ。

 

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