トップ > 特集・連載 > 医療 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

医療

【元記者の心身カルテ44】火のトラウマと闘う

写真

 東京大空襲から七十五年。米軍のB29爆撃機が投下した焼夷弾(しょういだん)で東京都内は焼け野原となり、犠牲者は約十万人に上った。かたや戦火のない現代。火事で生じた心の傷と闘う男性の姿を伝える。

 二十代の消防隊員。五年前、不眠と脱力感を訴えて来院した。きっかけはその三カ月前、住宅火災現場で初めて見た焼死者の衝撃。「助けられなかった」との思いが残った。テレビで別の火事を見た時、記憶がよみがえるフラッシュバックが生じ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断した。

 診察で丁寧に話を聴き、仕事も事務部門に移ると半年で回復。治療はいったん終了となった。ところが現場に復帰した後、救急出動の際に現場で大量の血を見て症状が悪化した。休職し、再び事務部門に復帰したが、「(自分の病気は)自分で治さなあかんぞ」といった理解のない声にがくぜんとし、京アニ事件や首里城炎上の報道でさらに落ち込んだ。

 診察で過去をたどっていく中で浮かんだのが、幼少時、ハムスターを死なせた時に感じた恐怖だ。でも「身近な人の死には出合ったことがなく、免疫がなかった。だから仕事で人の死に耐えられなかったのか」と自問する。

 消防士は英語でファイアファイター。火のトラウマ(心的外傷)と闘う日々が続く。 (心療内科医 小出将則)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索