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【広がる新型肺炎ワイド左面】特性知り「正しく恐れる」 感染者差別やいじめ 危惧

 「真偽が分からない情報に追われ、パニックになってはいけない」。長年にわたり地域医療に携わる諏訪中央病院(長野県茅野市)名誉院長で、内科医の鎌田実さん(71)=写真=は「正しく恐れることが重要」と訴える。

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 首相の要請を受け、二日から全国で多くの小中学校、高校などが臨時休校になった。大人でも不安になる中、鎌田さんが心配するのは、友達や先生に突然会えなくなった子どもたちの精神的ショックだ。「親がイライラしていると、子どもは余計にストレスをため込む。こういう時こそ冷静になることが求められる」と話す。

多くの人が買い求め品切れになったマスク=2月20日、名古屋市内で

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 まず大事なのは、どんな病気であっても特性を理解することだ。新型コロナに関しても世界保健機関(WHO)などが情報を出している。例えば、風邪。「風邪に効く抗生物質はない」と鎌田さん。「症状があるから」と受診すれば、院内で新型コロナを含め別のウイルスに感染する恐れもあり「自宅での安静が基本」と強調する。

 ただ、日本人はなかなか休まない。インフルエンザでも「会社を休むには『陽性』の診断書が必要」と受診する人は多い。そうした行動は医療機関をパンクさせ、さらには感染拡大の場所にする可能性があると理解しないといけない。

 新型肺炎に関わる動きの中で、もう一つ、鎌田さんが危惧するのは、感染を巡る差別やいじめだ。日本災害医学会の理事会は二月末、抗議声明を発表した。集団感染が起きたクルーズ船などで活動した医師らが職場で「ばい菌」扱いされたり、子どもが保育園から登園自粛を求められたりしたことが原因という。

 鎌田さんは「医療従事者が差別される状況になれば医療は崩壊する」と断言。患者が差別を恐れて感染を隠すことがあれば、さらに拡大の危険が増すとも。「誰もが感染する可能性がある今、感染したことを非難する言動は絶対にしてはいけない」と語気を強める。

 ニュースも新型コロナ一色で社会が騒然とする中、鎌田さんは「ストレスは免疫力を低下させるという論文もある」と指摘。電話を使って人と話す機会を多くつくるなど、心を落ち着かせるよう促す。

情報見極める力を

 新型コロナのような未知の病気に直面した時こそ、正しい情報を入手して活用するヘルスリテラシーが不可欠だ。だが、聖路加国際大看護情報学分野の中山和弘教授は「日本人のヘルスリテラシーは他国より低い傾向にある」と指摘する。

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 中山教授は二〇一四年、ドイツやオランダなど欧州八カ国の大学が作った四十七の質問項目を使い、二十〜六十九歳の日本人千五十四人に調査を実施。「治療に関する情報を見つける」「医師の説明を理解する」などについて四段階で難易度を尋ねたところ、「やや難しい」「とても難しい」と答えた人の割合が全項目で欧州の平均を上回った。中でも、インターネットを含むメディアの情報が信頼できるかを判断することについては73・2%が「難しい」ととらえ、欧州平均の49・7%を大幅に上回った。

 日本人のヘルスリテラシーが低い理由として、中山教授は、欧州に比べて学校で体や健康について学ぶ機会が少ないことを挙げる。また、WHOをはじめ英語のサイトから情報を得ることが難しいことも一因という。

 新型肺炎を巡り、ネット上には、さまざまな情報があふれ、不安につけこむ詐欺も横行している。「マスクを無料送付。確認お願いします」「費用を肩代わりするので検査を受けるように」などの文章をメールやショートメッセージで送り付け、個人情報を盗み取ろうとする手口に対し、厚生労働省や各自治体が注意を呼び掛けている。

 中山教授が、情報の正しさを見極める上で提案するのが「か・ち(価値)・も・な・い」の合言葉だ。「か」は書いた人は誰か。「ち」は違う情報と比べたか。「も」は元ネタ(根拠)は何か。「な」は何のために書かれたか。「い」はいつの情報か−を意味する。「出典がない情報はあてにならないと心得て、誤った情報に飛び付いたり拡散したりしないことが重要」

 

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