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オンラインで服薬指導 愛知・豊根村で実証事業高齢者宅に配送

 インターネットで買える市販薬と違い、薬局で受け取る必要がある医師の処方薬。薬剤師による服薬指導をテレビ電話などを使って受け、自宅にいながらにして入手することが、今年中に可能になる。二〇一八年に制度化された医師のオンライン診療と組み合わせれば、受診から服薬まで一貫した在宅医療が実現する。実証事業が続く愛知県内の現場で、課題や展望を探った。 (安藤孝憲)

受診と合わせ在宅医療実現へ

タブレット端末のテレビ電話機能を使い、自宅で薬剤師の服薬指導を受ける女性=愛知県豊根村で

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 愛知・奥三河地方の山間部に位置する豊根村。高血圧で治療中の九十代女性がベッド脇のテレビ電話の画面をのぞき込んでいた。相手は約八十キロ離れた調剤薬局「キョーワ薬局長久手店」(同県長久手市)の永井尭範(たかのり)店長。「毎朝二錠を忘れず飲んでくださいね」と言われ、女性は「はい、はい」とうなずいた。薬はその日の夜、薬局を運営する協和ケミカル(名古屋市)の社員が女性宅に届けた。

 村は一八年秋、同社とオンライン服薬指導の実証事業に関する協定を結んだ。人口約千人の村に薬局はない。処方薬は村営の診療所内の調剤所で受け取るか、種類によっては車で一時間以上かけて同県新城市や浜松市などの薬局まで行く必要がある。協定の締結には、止まらない高齢化を見据え、村民が使いやすい医療環境をつくる狙いがある。

 薬を飲む回数や個数、副作用などについて説明する服薬指導は現在、薬剤師が患者と対面して行うことが義務付けられている。しかし、昨年十一月に成立した改正医薬品医療機器法(薬機法)が施行されれば、オンラインでの指導が全国で可能に。改正に先立ち、国家戦略特区に指定されている愛知県と福岡市、兵庫県養父(やぶ)市では一八年六月から実証事業をスタートさせた。

 豊根村ではこれまでに、五十〜九十代の男女計四人が利用。「テレビ電話の操作にさえ慣れれば対面と変わらない」「車の運転に不安を感じ始めていたので助かる」と、全員が肯定的な感想を口にした。ただ、糖尿病の薬を飲む女性は「人口の少ない村では、診療所で互いに顔を合わせることも『お薬』みたいな面がある」とも漏らす。

 オンラインで服薬指導を受けるには、医師の診察もオンラインで受けることが必要だ。患者の仲介をはじめ事業に協力した診療所の医師、魚住隆雄さん(71)は「院内感染を防ぐ意味でも患者の選択肢が広がるのはいいこと」と指摘する。一方で「山間部より、働き盛りの世代が多い都市部で需要があるのでは」とみる。魚住さんは一六年に村に招かれるまで、名古屋市近郊で個人医院を開いていた。当時、よく見たのは、症状が比較的安定した若い慢性疾患患者が、処方薬を入手するためだけに医院や薬局で長時間待つ姿だ。「どこに需要があるかなど、まずは実績を重ねて課題を洗いだすことが必要」と話す。

日本薬剤師会は慎重姿勢

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 オンラインの服薬指導の対象は、定期的に通院の必要がある生活習慣病など慢性疾患の患者。初回は薬剤師と対面して指導を受け、処方内容が同じなら二回目からはテレビ電話を使う。患者にとっては交通が不便であることなどを理由に治療や服薬をあきらめずに済み、症状の悪化を防げる利点があるとされる。薬を届ける責任は薬局側が負うが、配送費用の負担については明確なルールがない。

 服薬指導を含むオンライン医療の推進は、一八年の骨太の方針に明記され、政府主導で進められてきた。ただ、愛知県などの特区で先行的に認められた遠隔の服薬指導の利用者は、昨年末までの一年半で二十人程度にとどまる。特区に住んでいること、慢性疾患、オンライン診療の受診−といった複数の条件を満たすことが必要である点を考慮しても、決して多くない。

 医師から薬局に送る処方箋の電子データ化など実施に向けての課題は他にも。個人経営など中小の薬局はオンラインに対応できない可能性がある。この問題に関する厚生労働相の諮問会議で委員を務めた日本医師会の会員の一人は「大手チェーンによる患者の囲い込みが進む」と懸念。日本薬剤師会も「オンラインはあくまで対面を補うもの」と慎重姿勢を崩していない。

 

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