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子どもが起きられない 起立性調節障害 知って

 小学校高学年から中学生にかけて発症しやすい「起立性調節障害」(OD)。立ちくらみや頭痛、腹痛、朝なかなか起きられない−などさまざまな症状を引き起こす病気だ。単に「怠けている」などと誤解され、症状を悪化させる例も多い。そうした中、昨春、名古屋で結成された東海地方初の家族会は、正しい理解を広げようと活動を続ける。 (編集委員・安藤明夫)

東海初の家族会 寄り添いが大切

 三月に愛知県内の通信制高校を卒業する女子生徒(18)が体調を崩したのは中学二年の初夏。朝起きるのがつらくなり、立ちくらみや吐き気なども出て、だんだん学校へ行けなくなった。ODと診断されたのは発症から四カ月が過ぎた時。症状をインターネットで調べた母親が総合病院の小児科に連れていって分かった。

ポレポレでアドバイザーを務める森川夏乃さん(中)=昨年12月、名古屋市内で

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 日本小児心身医学会によると、ODは軽症を含め中学生の約一割に見られ、女子が男子の一・五〜二倍。多くは数年で回復する。体内の環境を保つ自律神経のバランスが崩れ、血流の調節などがうまくいかないことが原因だ。主に四つのタイプがあり、代表的なのは起立直後に強い血圧低下が起こる「起立直後性低血圧」、起立後の血圧低下はないものの心拍が増加する「体位性頻脈症候群」の二つ。生徒は起立直後性低血圧だった。

 四つのタイプはいずれも午前中は症状が強く、午後から夜にかけて軽くなることが多い。不登校の三〜四割にODが関わっているというデータもある。「サボリだ」などと中傷されることも多く、生徒の母親も「学校が嫌で大げさに言っているのでは」と疑った時期があった。

 親や教師ら周囲の無理解は症状を悪化させることも。ODの患者・家族への支援を研究する愛知教育大心理講座助教の森川夏乃さん(32)によると、教師に頑張りが足りないと責められて落ち込む子や、「心の病気」と誤解されて心療内科に長く通院し、良くならない子もいる。「病気への理解を深め、本人、家族を孤立させないことが大切」

 森川さんの呼び掛けで、親たちが共同でつくったのが「起立性調節障害なごや家族の会・ポレポレ」だ。ポレポレは、スワヒリ語で「ゆっくり行こう」の意味。ほぼ毎月集まっては体験や悩みを語り合う座談会を開いている。

 OD治療の中心は、適切な食事や十分な睡眠時間、適度な運動、不安を軽くする心理的支援、学習支援といった日常の生活指導だ。特に、食事は水分不足が血圧の低下や頻脈の原因になることもあるため、水分を一日一・五〜二リットル、多めの塩分を心掛ける。生徒のような起立直後性低血圧の場合は、ゆっくりと立ち上がる習慣を身に付けることも大事だ。加えて、血圧を上げたり、脈を下げたりする薬も必要に応じて使う。

 生徒の母親は、褒めること、励ますことを心掛けた。一緒に運動するなどの時間も増やした。生活指導なども効き、生徒は高校へ進学。環境の変化で再び悪くなって通信制へ編入したが、大学進学も決まった今は「不安はあるけれど頑張りたい」と意欲を燃やす。

 母親は今、ポレポレの活動に参加している。親たちの願いは、正しい診断を受けられずに苦しむ子のため、病気を知ってもらうこと。今後は他地域の家族会との連携も目指している。(問)同会=Eメールod_nagoya@yahoo.co.jp

確認リスト三つ以上で要注意

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 ODかどうかの判断に役立つのが、十一項目のリストだ=表。ポレポレなどが八日に名古屋市内で開いた講演会で、昭和大病院小児科の田中大介医師は「三つ以上当てはまれば可能性がある」と話した。心配なら、日本小児科医会のホームページに一覧がある全国約千人の「子どもの心相談医」にかかるのがいいという。

 診断は新起立試験(ODテスト)を使う。横になっている間と、立ち上がった後の血圧と心拍、心電図、症状を比べ、四タイプのどれに当たるかを見極める。これらに当てはまらないタイプも約15%あるが、この検査ができる医療機関は全国で数えるほどという。

 昨年三月には岡山県教育委員会が、学校と家庭向けにODへの理解と配慮を促す指針を作るなど認知度は上がりつつある。田中医師によると、何より大事なのは「どんな時も味方だよ」と親がメッセージを送り、見守ることという。

 

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