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【元記者の心身カルテ40】 話せなくなる「場面緘黙」

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 建国記念の日。日本書紀で神武天皇の即位日とされる。建国神話は世界中にあるが、文字も伝承も言葉があるから成り立つ。今日は話す能力があるのに、状況によって全く話せなくなる選択性緘黙(かんもく)(場面緘黙)について。

 二十代女性。幼少時、父は交通事故の後遺症で仕事ができず、母が働きに出たため、三歳まで祖母に育てられた。祖母とは話せたのに、両親の元に戻ると、ほとんど話さなくなった。定時制高校卒業後に就職できず、二年半前、将来を心配した母とともに来院した。

 診察でも押し黙ったまま。三回目の来院で、飼育中のセキセイインコに語りかけていると母親から聞いた。そこで、筆談や、少しは会話をする母親を介しての話題を小鳥に集中させた。名前「マリナ」の由来がアニメのキャラクターと聞き出してから、女性はぽつり、ぽつりと話すようになった。

 選択性緘黙は幼少時に発症し、不安に陥りやすい内向的性格の人に多いとされる。虐待やトラウマ(心的外傷)を伴わなくても生じ、入学や転校など環境の変化がきっかけになることも。周囲はせかしたり代弁したりせずに見守り、話しても大丈夫という状況に本人が慣れていく治療が行われる。

 祖母と小鳥が相手の時だけ話せたのは、三つ子の魂が安心できる「ゆりかご」のような存在だったからだろうか。(心療内科医 小出将則)

 

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