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医療

【元記者の心身カルテ37】愛情欲して病気つくる

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 今日は「巨人の星」などの原作で知られる梶原一騎の命日。代表作の「タイガーマスク」は主人公が孤児院出身のプロレス漫画だ。孤児にまつわる話を伝える。

 四十代の女性看護師。生後へその緒の付いたまま名古屋駅近くに捨てられ、乳児院から里親に預けられた。准看護師の二十代、原因不明の腹痛と高熱を繰り返し、総合病院を受診。慢性虫垂炎を疑われ外科に入院したが異常はなく、私の勤めていた精神科に移った。付き添って測る体温は平熱なのに、ひとりだと三九度を超えた。

 診断は虚偽性障害。利益を得るためわざとうそをつく詐病とは異なり、世話を受けたいという愛情欲求から意図せず病気をつくってしまう精神疾患だ。たとえば、全身の皮膚に潰瘍があるが、原因不明の場合。手の届かぬ部位に潰瘍がなければ自分で傷つけたと判断でき、この疾患を疑う。虐待を受けた経験がある人も少なくない。

 信頼関係ができると女性は解熱したが、今度は一日五十回の下痢に悩んだ。里親を交えたカウンセリングでも症状は一進一退。私の転勤で受診は途切れた。それから十数年、女性から連絡があり、受診先を転々としながら正看護師の資格を取って働いていることを知った。まるで自分を看護したいかのようだ。名も顔も知らぬ生みの親を思い、「なぜ、捨てたの」とつぶやく。 (心療内科医 小出将則)

 

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