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医療

【元記者の心身カルテ36】心に潜む過去の深い傷

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 阪神淡路大震災から二十五年。被災者約三十万人の一人で、トラウマ(心的外傷)がもとで解離性障害を病んだ男性が当院に通う。

 生死に関わる体験をすると、心を守るため脳が外との交流を絶ち、今いる場所や時間が分からない「解離」と呼ばれる状態になることがある。さらに、つらい記憶が突然よみがえるフラッシュバックなどで生活に困るのが解離性障害だ。ひどいと、いつもの自分と異なる人格が現れることもある。

 八年前、当時三十代だったこの男性は、私の勤める精神科病院に救急搬送された。混乱して日付や場所、自分が誰かも分からない。そのまま入院したが、記憶がある程度戻るまで数カ月かかった。特効薬はなく、休養と安心ができる環境づくりが治療の中心だった。

 親が離婚し、小学生で児童養護施設へ。成人して働いた兵庫県西宮市のアパートで震災に遭遇。厳冬の夜明け前、布団の中で床下からの突き上げに怯(おび)えた。けがは無かった。ところがその後、ビル建設現場で作業中に十一階から七階まで落下。奇跡的に助かったがフラッシュバックに悩むようになった。愛知に転居しても解離は続き、気がつくと救急車の中だった。

 大震災と転落事故のトラウマが引き起こした悲劇。だが根本は児童期にあった。落ち着いた時に聴くと、施設での虐待という心の深傷(ふかで)が潜んでいた。 (心療内科医 小出将則)

 

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