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がん患者らのピアサポート講座 安心できる接し方学ぶ

 がんの患者や経験者、家族同士が支え合う「ピアサポート」。病院内や地域で多くの集いが開催されるなど、その役割の大切さは広く認識されるようになった。一方で、相手への接し方や守秘義務の考え方など運営面にはばらつきも多い。ピアサポートの質を高め、社会に定着させることを目指す取り組みを紹介する。 (編集委員・安藤明夫)

話は遮らない、漏らさない

目の高さを変えて、相手が受ける印象の違いを知る演習=名古屋市昭和区の名古屋大病院で

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 十一月初め、名古屋市昭和区の名古屋大病院であった、小児がんの患者を持つ家族を支えるためのピアサポーター養成講座。二日間計十時間超にわたった講座には、小児がんの親の会をはじめ、患者団体の関係者ら約三十人が参加した。

 闘病が長引いたり進学などに影響したりする小児がんは、親やきょうだいら家族にかかる心理的負担が大人のがん以上に重い面も。二〇一三年から各地で同様の講座を開く小児がんピアサポート推進協議会事務局長で、東海大医学部看護学科教授の井上玲子さん(55)は「カウンセリングの技術などサポーターの力量が問われる」と指摘する。

 講座では、最新の治療や看護などに関する知識を学ぶ一方、相手への寄り添い方、コミュニケーション技術の習得に時間を割いた。講師の一人、赤坂溜池クリニック(東京)のカウンセラー、田中純さん(64)が強調したのは、自分と相手は別個の存在だと認識すること。「患者の家族」といった立場は同じでも、患者本人の年齢や病気の進行度、家族構成などはそれぞれ違う。「私も一緒」という言葉は禁句だ。

 遮ることなく最後まで話を聞き、否定しない。話した内容を他に漏らさないのは鉄則だ。ロールプレーイングでは、視線一つとっても相手を見下ろすような体勢は、それだけで圧迫感を与えることも体感した。「癒やすのではない。安心して話せる条件を整えることで相手が癒えていくのがピアサポート」と話した。

 参加した彦田かな子さん(49)は乳がん経験者。今は名古屋市内でがん患者が集うカフェを定期的に開催する。「相手のありのままを受け入れる大切さを学んだ」と話した。

二〇一二年に策定された国の第二期がん対策推進基本計画では、ピアサポートの必要性を明記。国と自治体に研修の実施など体制の充実に努めるよう求めている。こうした中、「共通の倫理観を持って臨めるように」と、全国九十一のがん患者団体や障害者団体のリーダーらでつくるVHOネットは、独自にガイドラインづくりを進めている。

 一対一でピアサポートを行う場合、グループで行う場合で課題は違う。一対一の際は、そこで聞き出した個人的な情報をどこまで記録し、共有するか。グループの際は、情報の流出をどう徹底するか−だ。

 ガイドライン作成を担当する日本オストミー協会の山根則子さんは、記録の様式など各団体でまちまちの部分を統一することを検討している。ガイドラインを作ることで「医療現場からも、社会からも信頼されるピアサポートにしていきたい」と話す。

 国が一六年度に国内三十六のがん診療連携拠点病院を対象に実施した調査によると、ピアサポーターの活動実績があったのは二十六病院。地方ほどピアサポートが浸透していない状況が浮き彫りになった。

 

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