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ホンネ外来発「医師の横柄な態度に不満」 接遇研修増える

 医療機関での患者らの体験談を紹介する「ホンネ外来」。病気が治ったと感謝する投稿がある一方、「医師にいろいろ質問したら怒鳴られた」=愛知県・女性(44)、「おまえ呼ばわりされてショックだった」=同・女性(67)=など不満の声も目立つ。適切な治療には患者の信頼が欠かせない。相手を大切にする「おもてなし」が医療現場にも求められている。(平井一敏)

元CA 「思いやり」指導

「患者に何かを渡す時は両手を添え、笑顔で」と説明する後藤さん(右)=東京都港区のANAビジネスソリューションで

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 「医師らのちょっとした表情や言葉遣い、立ち居振る舞いが与えるインパクトは大きい」。患者は不安でいっぱいだ。医療現場の接遇研修を手掛けるANAグループのANAビジネスソリューション(東京)で講師を務める後藤千幸さんは、一般のサービス業以上の丁寧な応対を呼び掛ける。

 一般企業のマナー研修を行っていた同社が、本格的に医療機関も対象にし始めたのは十年ほど前だ。人口減少で患者の確保が難しくなる中、医療機関側から依頼があったことがきっかけという。

 「医師の中には『診てやっている』という意識の人もいる」と後藤さんは指摘。大事なのは「患者に対して思いやりを持つだけでなく、それを表現すること」と話す。相手の気持ちを、自分に置き換えて接することが大切という。医療現場は、日々多くの患者を受け入れ、救急にも対応するなど多忙だ。しかし「忙しいのは自分たちの都合。常に接遇の心を忘れないことが患者の安心と信頼につながる」と強調する。

 「航空業界と医療業界はどちらも命を預かる仕事」と話す後藤さんは元客室乗務員(CA)だ。旅客機は操縦士やCA、整備士、医療機関は医師や看護師、技師など専門職がチームを組んで業務に当たる点も共通している。

 東京と大阪で月一回、医療機関向けの公開講座を開催。要望があれば元CAなどの講師が現場に出向いて医師らを指導する。依頼は年々増え、昨年度は全国の約二百十機関で実施。中部九県では十八機関が受講した。研修では受講者の自己紹介をビデオに撮り、表情や姿勢、癖などを確認。柔らかな表情、清潔な身だしなみ、言葉遣いなど好印象を抱かせるポイント=表=を学んだ後、受付や案内、会計など場面ごとの応対を医療関係者役と患者役に分かれて演じ、感想や改善点を話し合う。

 個人の対応が医療機関全体の印象につながる可能性もある。「院内でも研修を行うなど、全てのスタッフが接遇の大切さを共有することが大事」と言う。スタッフ同士の接し方も注意が必要だ。互いを認め合えば自然に職場が明るくなり、患者も大切にできるという。後藤さんは「患者から『雰囲気が良いね』と言われる頻度を高めて」と話す。

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医学生も傾聴力磨く

愛知医科大、患者を模擬診察

 医療系大学も学生の接遇力向上に余念がない。その一つが、医療面接(模擬診察)だ。医療面接は診察や手術の説明、がんの告知などさまざまな場面を想定。模擬患者とのやりとりを通して、言葉や態度で共感を表したり、専門用語を分かりやすく言い換えて説明したりすることを実習する。

 愛知県長久手市の愛知医科大は、二〇〇四年から医療面接の授業を始めた。患者役を務めるのは同大病院の患者ら県内の約六十人。年四回の勉強会でシナリオに応じた演技や受け答えを練習した上で、学生との授業に臨む。学生にとっては教員らを相手にするのと違って臨場感がある。同大では一年生から学生同士によるコミュニケーション実習を始め、二年生の時点で模擬患者との面接を実施。六年生まで毎年三十時間以上を医療面接に充てる。

 診察の目的は病名を突き止めることだが、それには誠実に話を聞く傾聴が大事という。「○○です」と自己紹介をして親近感を持ってもらったら、「急にやせた」「頭が痛い」「動悸(どうき)がする」などという患者の声を、「それはおつらいですね」など相づちを打ちながらひたすら聞く。患者が話し終えたら、そこから詳しく質問をする。一つの診療にかける時間は約十分だ。指導する同大医学部シミュレーションセンター講師の川原千香子さん(54)は「敬語が使えず、目を見て話せない学生もいる。早くから人と接する経験を積んだ方がいい」。難しい病気を宣告する時は「大切なお話があります」と心の準備をしてもらうのも大事という。

 全国の医・歯学部で、病院実習前の四年生を対象にした医療面接「客観的臨床能力試験(OSCE、オスキー)」が必須になったのは〇五年だ。同大医学教育センター長で総合診療医の伴信太郎さん(67)は「現場にこうした教育を受けた医師が増えれば患者とのトラブルは減る」と期待する。

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 「例えば『手術後の生存率は○△%』など医学的には正しいことを伝えても、患者が望むことと違えば『心ない言葉』と受け止められる例もある」と川原さん。「それをカバーするのが接遇。きちんとコミュニケーションを取って、患者や家族の気持ちに寄り添える医療人になってほしい」

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 「ホンネ外来」は患者や家族、医療関係者らが医療現場での体験や感じたことを語り合う欄です。〒460 8511(住所不要)中日新聞医療取材班。ファクス=052(222)5284、左記の電子メールで。紙面では匿名ですが、〒住所、氏名、年齢、職業、電話番号を書いてください。中日プラスからの投稿も可。

 

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