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【元記者の心身カルテ32】 角栄さん、歌でリハビリ

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 中曽根康弘元首相の死去を受け脳裏に浮かんだのが、同い年だった田中角栄元首相=享年七十五=を取材した三十四年前の記憶だ。

 尋常高等小学校卒から苦学して政界の頂点に立ち、金脈問題で退陣。ロッキード事件で被告となった後も権勢を振るったが、病気が政治生命を奪った。六十六歳の一九八五年二月末、脳梗塞で入院。駆け出し記者の私は病院前で張り込みを続け、貴重な情報源を得た。

 角さんは派閥争いのストレスから酒量が増加。持病もあり、血栓で脳の太い動脈が詰まった。言語中枢のある左側だったので言葉が出ず、右半身も麻痺(まひ)で動かない。治療方針をめぐって医師団とすれ違った家族が、同年四月末に極秘退院させたことをスクープした。

 自宅での療養中も動静を見守った。リハビリ用に四本足のつえを特注し、ヘリからの盗撮を気にしつつベランダで日光浴。力を入れたのが歌。黒田節を唸(うな)った。話せないのに歌えた理由は、脳の違う場所を使うからだ。ある研究では、会話できない患者二十四人のうち歌えないのは三人だけだった。

 音楽で治療する考え方は古代からあり、聖書には竪琴(たてごと)の演奏でうつ病を治す記述がある。わが国では現在、音楽療法士が施設や病院で活躍する。幼少時、吃音(きつおん)を克服しようとお経や法律書を暗唱した逸話を持つ角さん。ま、その、歌は癒やしだわな。(心療内科医・小出将則)

 

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