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医療求人 仲介料なし 看護師、事務、送迎など34職種

 医療従事者の不足が全国的な問題になる中、名古屋市医師会は来年一月に独自の求人サイトを開設し、人材確保に乗り出す。募集対象は医師や看護師に加え、助産師、保健師、送迎ドライバーなど三十四職種に上り、採用が決まった場合も紹介手数料はかからない。少子高齢化で人手不足はさらに深刻化すると予想され、地元の医師会が一丸となって人材確保を目指す取り組みは全国でも注目されそうだ。(植木創太)

名古屋市医師会 来月独自サイト

 サイトは一月六日にスタート。人材採用支援会社「HRソリューションズ」(東京都中央区)から技術提供を受け、数百万円をかけて制作した。開設後の運営費は、求人を希望する名古屋市医師会の会員が払う年一万円の登録料で賄う。

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 市医師会などによると、医療求人サイトは医師や看護師などの団体や民間業者が複数開設しているが、職種を限ったサイトが多く、送迎ドライバーや管理栄養士などを含め、医療機関の経営に必要な人材を一括募集するケースは珍しい。民間業者のサイトは採用に結び付いた場合、医療機関側がサイトの運営者に紹介手数料を払うケースが多い。

 市医師会のサイトは、求職者がスマートフォンなどを使って働きたい区や職種、勤務形態などの条件を絞り込み、希望の医療機関を選択。通信アプリ「LINE」などで応募する。医療機関は本人と直接やり取りして採用の可否を決めるが、結果にかかわらず紹介手数料は発生しない。

 医師会は今夏、千八百五十五の会員施設にアンケートを実施。回答した八百四施設(回答率43・3%)の約六割がスタッフ募集のために「人材紹介会社を使ったことがある」と答えた。紹介手数料は最も不足している常勤看護師の場合、「採用した人の年収の二割」との回答が約五割を占めた。高額な手数料が負担になるため人手不足を解消できず、廃業や休業を選んだ施設もあったという。

 十月から会員施設にサイトの案内を始めたところ、既に二百五十施設から登録の希望があったといい、医師会の服部達哉会長(58)は「地域医療の質を保つためにも、サイトを浸透させたい」と話している。

人手確保に手数料361億円

16年度総額 原資は保険料や税金

 名古屋市医師会が独自のサイトで人手不足解消に取り組む背景には、人材紹介ビジネスの激化がある。

 厚生労働省の二〇一六年度の集計によると、看護師、保健師など看護職員の採用に関し、全国の医療機関が紹介業者に支払った手数料の総額は前年比6・7%増の三百六十一億円。データがある一四年度以降、増加が続いている。

 市医師会によると、人手不足はクリニックや医院など医療機関の規模が小さくなるほど深刻で看護師や事務員など一人当たり数十万〜数百万円の高額の手数料を払って雇っているケースは少なくない。

 紹介業者の多くは求職者と医療機関双方のニーズを満たす仲介をしているが、中にはトラブルになった例もある。名古屋市の開業医(42)は数年前、業者を通じて看護師を採用したが、約一カ月後に退職した。業者に払った手数料は戻らず、「だまされた気分。でも業者を使わないと人は集まらない」と頭を抱える。

 医療機関の主な収入は診療報酬で、大半が保険料と税金で賄われている。高齢化で国全体の医療費が膨らむ中、紹介業者に保険料などが流れることを疑問視する声もある。

 厚労省は、団塊の世代が全て七十五歳以上の後期高齢者になる二五年に、看護職員が六万〜二十七万人不足すると推計している。病院経営に詳しい城西大の伊関友伸(ともとし)教授は市医師会の取り組みを評価し、「手数料分をスタッフの待遇改善に使って、働きやすい職場にする。そうすれば、医療に携わりたい人が増えるのではないか」と話した。

 

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