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医療

AEDためらわずに使って 遺族ら啓発活動

 心室細動という不整脈によって心停止に陥った人の命を救う自動体外式除細動器(AED)。医師だけでなく、一般の人が使えるようになって今年で十五年になる。全国各地に計六十万台が設置される一方、一刻を争う場に居合わせた市民が使う例は少ないままだ。こうした状況に、AEDを使えば助かったかもしれない子どもの遺族らは、積極的な使用を訴えている。(細川暁子)

失敗恐れずに 手順、音声が案内

 十一月十八日、愛知県小牧市の小牧中であった救命講習会。二〇一一年九月、小学六年だった娘の明日香さん=当時(11)=を心臓突然死で亡くした桐田寿子さん(48)=さいたま市=が、保護者ら約五十人に呼び掛けた。「AEDは飾る物ではない。使う物なのです」

 明日香さんが倒れたのは、学校で駅伝の練習をしていた時だ。救急車が来るまでにかかった時間は十一分。保健室にあったAEDは使われず、翌日、息を引き取った。

 総務省消防庁の一八年版「救急・救助の現況」によると、救急車到着にかかる時間は平均八・六分。心停止後に、心臓マッサージや、不整脈を電気ショックで正常に戻すAEDによる心肺蘇生をしないと、助かる可能性は一分ごとに10%ずつ下がるとされる。

 一七年、心臓を原因とする心肺停止の患者のうち、一般市民の目の前で倒れて搬送された患者は二万五千五百三十八人。AEDが使われた例は5%未満にとどまる。AEDの手当てを受けた人で一カ月後に社会復帰できた人は45・7%に達し、使わなかった場合の六・七倍だった。

 この日、指導したのは、任意団体「愛知PUSH」の副代表で、消防隊員・救急救命士の田島典夫さん(47)。英語で「押す」を意味するPUSHには「救命に向けみんなの背中を押す」という決意を込めた。「電源を入れたら流れる音声案内に従うだけ」と説明はシンプル。一人一枚ずつ配られた体の形を描いたシートに、参加者は胸の位置を確認しながらパッドを貼った。

 愛知PUSHの設立は四年前。明日香さんの事故の報道がきっかけだ。メンバーは医師や看護師ら約十人。昨年は、愛知県を中心に約五千人がPUSHの講座を受けた。

 AEDを使う人が増えないのは「『失敗したら?』という不安が大きい」と田島さんはみる。手当ての結果に対して責任が問われることは、原則としてない。田島さんは「パッドを胸に貼れば機械が自動的に心電図を解析する」と説明。「電気ショックが不要なら電気は流れない。安心して使って」と強調した。

 AEDは講習を受けるのが望ましいが、誰でも使うことができる。「救命に成功した人の功績だけでなく、使った人の勇気をたたえてほしい」

明日香さんの事故 教訓に

小学校の教科書に掲載

 日本学校保健会によると二〇一二〜一六年度、全国の公立小中高でAEDの手当てを受けたのは百四十七人。そのうち十九人は亡くなったが、約七割は後遺症もなく学校に復帰した。

 明日香さんが倒れた際、教員らは明日香さんが呼吸をしていると判断、救命措置をしなかった。だが、それは、低酸素時にあごが動く「死戦期呼吸」だった可能性が高いと、後の調査で指摘された。

 事故の翌年、さいたま市教育委員会は呼吸や意識の有無にかかわらず、AEDの使用を促す教職員向けのテキストを作成。テキストは「ASUKAモデル」と名付けられ、示された救命の手順は来年度から、小学五、六年が使う東京書籍などの保健の教科書に掲載される予定だ。

 「ASUKAモデルは、子どもを守れる学校をつくりたいという願いの表れ」と母親の寿子さん。日本AED財団専務理事の石見拓・京都大教授(47)も「学校で子どもだけの時に倒れることもあるので、小学生のうちから手順を学ぶ意義は大きい」と話す。

 

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