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【元記者の心身カルテ30】肉体の痛みと心の関係

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 鍛え上げた肉体に日本刀を突き立てた作家三島由紀夫の死から半世紀。当院にもみずからの腕に刃物を当てた四十代の男性が通う。

 六年前、家族に連れられて私の勤めていた精神科病院に来た。「野菜で包丁の切れ味を試そうとしたら手を切った。痛くなかったので、確認しようと反対の腕を傷つけた」と人ごとのように語った。

 聞けば、幼少時から頑固で癇癪(かんしゃく)持ち。尋常でないこだわりや感覚異常があると分かり、発達障害と判断した。だが、男性が痛みに鈍感だったのは、より強い痛みを感じる別の持病があったせいだ。

 線維筋痛症。全身にわたり慢性の痛みが生じる病気で、ひどいとナイフで切り裂かれるような痛みが続く。強い疲労感やうつ状態などを伴うことも多く、天候やストレスで悪化する。原因は不明だが、痛みの信号を伝えたり、抑えたりする脳の機能に障害が起きていると考えられており、弱い刺激でも痛みを感じるようになる。

 男性は二十代で脳腫瘍の手術をした後、しばらくして体のあちこちが痛みだした。医療機関を渡り歩き、三十代後半でようやく専門医に線維筋痛症と診断された。痛みを抑えるため医療用麻薬も必要とする。それに比べれば包丁の切り傷は無きに等しかっただろう。

 自衛隊に決起を訴えた三島。四十五歳で果てた最期、どんな痛みを覚えたのか。 (心療内科医 小出将則)

 

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