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【元記者の心身カルテ25】 リチウム 心の治療薬にも

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 リチウムイオン電池を開発した吉野彰さんがノーベル化学賞に輝いた。生活に欠かせない金属のリチウムは心の病気にも使われる。

 五十代の女性が最近、夫の同伴で来院した。話し声はクリニック全体に響く大きさだ。睡眠二時間で未明から家じゅうを大掃除、脚立から落ちて足首を捻挫した。ギプスを巻いたまま、せかせかと動き回る。十数年前、隣家の火事や近親者の死が重なり、他院でうつ状態の治療を受けた経験がある。

 診断は双極性障害(躁(そう)うつ病)。気分が落ち込むうつ病と違い、高揚する躁状態を伴う。女性に多い甲状腺機能亢進(こうしん)症でも似た症状が出るので、血液検査などで見分ける。うつ状態で病気が始まる場合、初期の診断は専門医でも困ることがある。うつ病はきまじめな性格の患者が中心なのに対し、双極性障害は陽気な患者が多い。女性も社交的で、料理に手芸、ゴルフ、スキーと趣味も多彩だった。

 処方したのがリチウム。躁うつ病の治療では気分安定薬として最初に選ばれる。七十年前、神経を鎮めるのに有効と分かった。ただ副作用を起こしやすいという難点がある。なぜ効くのかメカニズムは解明されていないが、五年前、ビタミンに似た働きのあるイノシトールが関わるとの研究成果が報告された。副作用の問題解決につながる可能性がある。基礎研究はやはり重要だ。(心療内科医 小出将則)

 

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