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働く重度障害者 介護に“空白”(左面) 就労中は「福祉」対象外 国は「雇用支援」で対応

制度改正求める声多く

 厚生労働省の調査では、二〇一八年六月現在、民間企業に雇用されている障害者は約五十三万人で、このうち常時介護が必要な重度障害者は約十三万人。雇用者数と実雇用率(2・05%)ともに過去最高となった。だが、通勤や勤務時に公費によるヘルパー利用はできないまま。制度改正を求める声は多く、自治体が独自支援に乗り出す動きも出てきている。

国会に初登院し、介助者に押されながら参院本会議場に入るれいわ新選組の舩後靖彦議員(右)と木村英子議員=東京・永田町で

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 重度訪問介護(重訪)は、障害者総合支援法に基づき、障害者が利用できるサービスの一つ。常時介護が必要な重度の身体、知的、精神障害者が対象で、障害者の自宅にヘルパーが訪れ、排せつや入浴、食事など長時間の訪問介護サービスを提供する。利用者の自己負担は一割で、残りは公費だ。

 通院や買い物など、外出時の移動支援も含まれているが、〇六年の厚労省の告示によると「通勤や営業活動などの経済活動にかかる外出」は対象外。このため、通勤や仕事にかかる経費は就労先の企業の負担もしくは、障害者の自己負担になっている。

 なぜか。厚労省障害福祉課によると、就労は「個人の経済活動」にあたり、その支援は、障害者差別解消法で求められる「合理的配慮」として職場の事業主が行うべきだと指摘。福祉として公費で行えば、事業主の支援が後退するおそれがある、と説明する。

 このため、経済活動としての障害者の就労支援は、福祉政策ではなく、障害者雇用促進法で「企業が合理的配慮をする義務がある」と規定。職場で障害者の仕事を支える「職場介助者」の配置はその一つで、国が人件費の四分の三を助成。財源は障害者の法定雇用率を満たせない企業が納める「障害者雇用納付金」をあてている。

 ただ、現実は厳しい。一八年度の厚労省の障害者雇用実態調査で、身体障害者を雇う事業所の中で、配慮事項で「通勤」を挙げたのはわずか22%。また、同調査で、働く身体障害者の一カ月の平均賃金は二十一万五千円にとどまる。

 障害者の就労支援に詳しい埼玉県立大の朝日雅也教授(61)=障害者福祉=は「企業が障害者の通勤手段をすべて確保するのは、過重な負担になる。また、障害者が自費でヘルパーを雇うのは経済的にも厳しい」と指摘。「働いていても、生命や体力を維持するため、重訪を含めた公的支援が必要。労働をすべて自己責任で全うするという社会の価値観も変わらないと、障害者の雇用は進まない」と話す。

 このため、障害者団体などは何度も国に制度の見直しを要請。進展はなかったが、七月の参院選で初当選した、重い障害のあるれいわ新選組の舩後靖彦、木村英子両議員が議員活動中の公費によるヘルパー派遣を要望。参院は当面、二人の登院日に一日八時間分の介助費を負担することを決めた。厚労省も制度の見直しを含めて検討している。

 障害者のニーズに応えようと、自治体独自の動きも。さいたま市は一九年度から独自に、在宅勤務する重度障害者に、勤務中でもヘルパーを派遣する制度を始めた。現在、二人が利用する。また、大阪府と大阪市は八月、重度障害者が通勤・通学時や就労時に介護サービスを公費で受けられる独自の支援制度を創設する方針を明らかにした。

 愛知県の障害者団体「愛知障害フォーラム(ADF)」(名古屋市)も八月、同県に対し、国への制度改正の働きかけや県独自の支援制度の検討を要望。自らも重度障害者で、事務局長の辻直哉さん(47)は「重度障害者の議員の誕生で、問題がクローズアップされたことは大きい。議員活動にとどまらず、地域の障害者が活躍できるような制度改正につなげたい」と話す。

 

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