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【元記者の心身カルテ20】 「死にたい」言える関係に

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 十日の菊−。菊は九月九日の節句翌日には役に立たなくなるため「時すでに遅し」を意味する言葉。きょう九月十日は、くしくも世界自殺予防デー。人生に終止符を打ったある患者の姿を振り返る。

 数年前の春、四十代前半の独身女性が自宅で首を吊(つ)った。その一年前から将来への不安を訴え、私のクリニックに通院していた。遺書はなかった。

 在日外国人として生まれ、日本名で育った。大学卒業後、就職がうまくいかなかった頃から、気分の波が目立つように。二十代後半から十数年間、あちこちの精神科に通ったが、改善しなかった。途中、父親の死もあった。

 生前、女性は自殺願望を繰り返し口にした。「父から感情を表に出さないように育てられ、人からは落ち着きすぎと言われた。ずっと家にいて結婚もしていないし、『取り残され感』を修正できない。死ぬより生きる方が難しい」。薬も、よく話を聴くことも、効果はなかった。死の直前は、「死にたい」と言わなくなった。

 先日、自傷行為の理解と援助について、薬物依存研究で有名な松本俊彦医師から講義を受けた。自殺の危険因子とされる市販薬乱用や過食などの依存行動が女性にもあった。「大事なのは、死にたいと患者が言える関係を続けること」と強調された。十日の菊とならぬように。(心療内科医・小出将則)

 

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