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教習所と連携し支援【高齢者】 医療・研究機関が訓練プログラム

弱点自覚し技能向上

 高齢者や、障害を負った人が安全に運転を続けるにはどうすればいいのか。高齢ドライバーらによる事故が社会問題となり、免許の自主返納や、周囲が返納を促す動きが広がる半面、地方では車がないと不便な生活を強いられる例も少なくない。医療や研究の現場では、自動車学校と連携して訓練プログラムをつくり、「安全運転寿命」を延ばす試みが始まっている。(山本真嗣、出口有紀)

男性(左)の運転をドライブレコーダーで振り返り、改善点を指導する水野さん=愛知県みよし市の三好自動車学校で

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 「右折は判断すべきことが多い。高齢者は時間をかけることが大事です」

 六月初め、愛知県みよし市の三好自動車学校が、公道で行った高齢者向けの安全運転訓練。男性(82)に対し、教習課長で検定員の水野雅文さん(53)がドライブレコーダーの映像を見ながら指摘した。

 男性は交差点で、トラックに続いて右折しようとした際、対向の直進車に気付くのが遅れ、助手席の水野さんが補助ブレーキをかけた。「トラックが邪魔で見にくかった」と男性。左折時、右に膨らむ癖があることも分かった。

 訓練は、国立長寿医療研究センター(同県大府市)が、二〇一七年度から同校と共同で実施。参加者は仮免許を取る時とほぼ同じ検査を受けた後、教習所内で三回、路上で一回の実車訓練を行う。アクセルとブレーキを踏み間違えたらどうなるか、どんな時に死角が生まれるかなどを経験させ、安全運転への意識を高めることが目的だ。

 訓練には本年度、男性を含め五人が参加。訓練前の検査では、全員が設定した基準を下回った。しかし訓練後は、いずれも大幅な改善が見られた。大きな事故の経験もなく、ゴールド免許を持つという男性は「こうした機会は高齢者に必要」と満足げだ。

 現在、七十五歳以上のドライバーは免許更新時に認知機能検査を義務付けられている。認知症と診断されれば、免許取り消しか停止に。ただ、これは認知機能が著しく低下した人への対処だ。長寿研は、それ以外の高齢者が安全に運転を続けられるカリキュラムの開発を目指している。

 背景には、運転と健康の密接な関係がある。注意力や判断力など、運転には高度な認知機能が必要だ。長寿研が一一〜一二年、大府市内の約三千五百人に行った調査によると、運転をやめた高齢者は続けた人に比べ、要介護状態になる危険が八倍に。また同じ期間、同市内の約四千六百人を対象に認知症リスクを調べたところ、運転する高齢者の方が約四割低かった。長寿研老年学・社会科学研究センター長の島田裕之さん(48)は「高齢者が自立した生活を送るために運転の継続は重要。そのためにも運転のレベルを保つ訓練が大事」と指摘する。

 長寿研は一五、一六年、軽度の認知機能低下が認められる高齢者計七十一人に危険予測や動体視力の訓練などを計十回(週一回六十分)、実車訓練を十回(同)実施。訓練前に行った仮免許取得時と同じ内容の検査で合格ラインに達した人はゼロだったが、訓練後は四割が上回った。島田さんは「自分で大丈夫と思っていても安全運転ができていない高齢者は少なくない」と指摘。「しかし、弱点を自覚して訓練すれば、運転能力は上向く」と話す。

 高齢者に長く運転を続けてもらおうという試みは各地にある。神奈川県大和市が一七年から実施するのは、七十歳以上の市民にドライブレコーダーを貸し出し、運転の内容を専門家に見てもらう「シルバー・ドライブ・チェック」。一回十五人で、年五回行っている。延べ百五十八人が利用した。日本自動車連盟(JAF)は、視力や運転にかかわる認知機能の訓練ができるソフトを開発。ホームページの「高齢運転者総合応援サイト」で公開している。

 

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