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強迫性障害 治療で改善 過剰な手洗い 火の元確認やめられない

強迫性障害 治療で改善

 「ばい菌が付いている」「忘れ物をしたかも」などの強迫観念に取りつかれ、それを打ち消そうと手を洗い続けたり、何度も確認したりといった強迫行為を繰り返す精神疾患「強迫性障害」。生活に支障をきたすだけでなく、周囲との関係がこじれてしまう例も。これまでは「性格の問題」で済まされることも少なくなかったが、病気だという認識が一般にも広まりつつある。 (花井康子)

投薬と併用 行動療法 患者主体で

 愛知県の高校二年の男子生徒(16)の母親(50)が、おかしいと感じたのは昨年十二月。一緒に出掛けた時のことだ。手ぶらで家を出たにもかかわらず、帰る途中で「何かを落とした気がする」と言いだした。帰宅しても「確認したい」と繰り返したため、行った先に電話で聞いたが、何も見つからなかった。

 その後、通学でも同様の症状が出始めた。学校からの帰り道、落とし物をしていないかが気になって、自宅に向かって学校を出ては、来た道を引き返すように。通常なら二十分ほどで着くところ、倍以上の時間がかかることもあった。

● 30分以上歯磨き

 もともと神経質で、言われた通りにできないと気に病む性格という。症状は、落とし物の確認から次第に増えて重症化。歯磨きは三十分以上、風呂ではカサカサになるまで体を洗った。学校の試験も「字がうまく書けない」と問題を解く時間がなくなるまで、消しては書くを繰り返した。最初は説得したり、しかったりしてやめさせていたが、一つやめても、また別の行動を繰り返すため家族も疲れてしまった。本人も「やめたいのにやめられない。自分が嫌になる」と訴えた。

 精神科で「強迫性障害」と診断されたのは、症状が強く出始めてから約二週間後。今は抗うつ薬と抗精神病薬の服用のほか、入浴の時間を決めるなど時間や数で生活を区切る工夫をし、少しずつ改善に向かっている。

 世界保健機関(WHO)は、強迫性障害を「生活上の機能障害を引き起こす十大疾患の一つ」と認定。発症は十〜三十代が多い。性格や成育環境、ストレス、遺伝などが関わっているとされるが、はっきりとした原因は分からない。厚生労働省によると二〇一七年十月現在、全国の患者数は四万一千人とされる。

 汚れへの恐怖から手洗いや風呂に過度に時間をかける「洗浄強迫」と、戸締まりや火の元が不安になって確認を過剰に繰り返す「確認強迫」の二つが、典型的な症状だ。他に、物の配置にこだわってしつこく整理整頓をする例も。この疾患に詳しい名古屋市天白区の八事病院精神科医長、橋本伸彦さん(49)は「もともとの性格が潔癖症の場合もあるが、あてはまらない人もいる。発達障害が関わっていることも多く、原因は多様で複合的」と話す。

 精神を安定させる抗うつ薬などの服用と、考え方や行動に働き掛けて気持ちを楽にする「認知行動療法」を併用すると、一定の効果が出ることが多い。強迫性障害の患者に行われる認知行動療法は「曝露(ばくろ)反応妨害法」が代表的。怖いと感じる状況にあえて向き合い、強迫行為を我慢する治療法だ。不潔であることが恐怖の患者に、トイレの後に手を洗わないで過ごさせることなどが一つ。最初は大変だが、続けるうちに不安が弱まり、強迫行為をしなくて済むようになるという。

● 無理強いしない

 患者の中には、手を洗うといった行動を周囲にも強要する人がいて、家族らが疲弊してしまうケースも。また、周囲が強迫行為を無理矢理やめさせようとするあまり、けんかになる例も少なくない。

 大事なのは、無理強いをしないことだ。橋本さんは「周囲は声を掛ける程度にとどめ、本人が自分で考え、主体的に取り組むことが必要」と指摘。早期に治療しないと重症化する恐れもある。「薬が効きづらかったり、治療が長期にわたったりすることも多いので、専門医のいる精神科を受診して」と呼び掛けている。

 

 

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