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中皮腫・オプジーボに期待 専門学会が初の学術集会

 治療の難しいがん、中皮腫。建築資材として使われていたアスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因だ。発症数は石綿の使用が禁止された今も次第に増えているが、がん免疫治療薬「オプジーボ」が効く例があることも分かってきた。国内では二月、日本石綿・中皮腫学会が設立された。九月に初めての学術集会が名古屋市で開かれるのを前に、同集会の会長で愛知県がんセンター研究所副所長の関戸好孝さん(58)=写真=に聞いた。 (編集委員・安藤明夫)

石綿規制後も増える患者

 アスベストによる中皮腫、肺がんなどの健康被害は一九七〇年代から指摘され、使用が徐々に規制されてきた。二〇〇五年には兵庫県尼崎市の大手機械メーカー・クボタの旧工場の周辺地域で、過去に工場で使われ、空気中に飛散していたアスベストを吸い込んだ住民や元従業員が相次いで中皮腫を発症し、死亡していたことが判明。「クボタショック」として社会問題となった。

治療の進歩と課題を話す関戸好孝さん

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 国は翌年からアスベストの製造、輸入、使用などを全面禁止。従来の労災保険法に加え、労働者以外の石綿工場周辺の住民らに対して医療費助成や遺族補償など被害者の救済制度を設けた。

 日本石綿・中皮腫学会は、一九九〇年代から活動してきた石綿・中皮腫研究会と、クボタショックをきっかけに設立された日本中皮腫研究機構が今年二月に統合してできた。

 関戸さんによると、中皮腫は、アスベストの吸入から発症までの潜伏期間が三十〜四十年と長く、発症者は年々増加。年間千五百人ほどが亡くなり、二〇三〇年ごろには、三千人のピークに達するとの予測もあるという。

 最も多いタイプの悪性胸膜中皮腫の場合、診断後の平均余命は一年と少し。以前から保険承認されていた抗がん剤も多少の延命効果がある程度で、胸膜と肺を切除したり、肺を残して胸膜のみをはがしたりする外科手術も、根治を望むことは難しい。

 現在、注目されているのが、本庶佑(たすく)・京都大特別教授のノーベル賞受賞で話題となった免疫治療薬のオプジーボ。がんによってブレーキのかかった免疫細胞の攻撃力を再び活性化させる「免疫チェックポイント阻害剤」という薬で、昨年八月から中皮腫の治療でも保険で使えるようになった。

 関戸さんによると、一部で腫瘍が縮小したり、がんの進行が止まったりするなどの効果が報告されている。最も治療が難しいといわれる肉腫型が著しく改善したという事例もある。

 ただ、まだ効果の出る割合は高くなく、どのようなタイプの中皮腫に効きやすいかを調べる研究も行われている。また、オプジーボとともに同様の免疫チェックポイント阻害剤を複数組み合わせることで有効性を高める治験も各地で進んでおり、関戸さんは「患者さんには福音になるのではないか」と期待する。九月の学会では、これらの研究成果も発表される予定だ。

 一方、現在も続く課題もある。古い建物の解体工事などの際は、アスベスト飛散防止が法令で義務付けられているが、対応が不十分な例もみられるという。

 また発展途上国の多くで、アスベストが規制されておらず、「肺がんと中皮腫などを識別して診断できる態勢も整っていない。被害の実態も見えないのが現状」といい、国際的な対策の必要性を啓発していく。

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 中皮腫 肺を包む胸膜や、おなかの内側を覆う腹膜などの中皮細胞から発生する腫瘍。大半は悪性。発生する場所によって悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫などに分けられる。また、がん細胞の種類ごとに全体の約60%を占める上皮型、より悪性度の高い肉腫型、上皮型と肉腫型が混在する二相型がある。胸の痛みやせき、胸水が大量にたまることで生じる呼吸困難などが主な症状。年間約1500人が新たに中皮腫と診断されている。

     ◇

 同学会の市民公開講座「こんなに良くなった中皮腫治療」(中日新聞本社後援)は、九月二十二日午後二時から、名古屋市千種区、愛知県がんセンター内の国際医学交流センターで開かれる。

 専門医三人が治療の進展について話すほか、加藤宗博・旭ろうさい病院呼吸器内科主任部長が補償制度を解説する。患者団体共同代表の右田孝雄さんは「患者が医師に望むこと」を話す。入場無料。(問)愛知県がんセンター研究所分子腫瘍学分野・佐藤さん=電052(764)2983、2993

 

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