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口の衰え 運動機能と相関性 愛知・東浦町 高齢者調査で中間報告

かむ力やのみ込む力といった口の働きと、身体全体の健康との関わりについて検証する調査が、二〇一八年度から愛知県東浦町で行われている。調査は県歯科医師会が実施。三月に公表された中間報告によると、運動機能などに衰えが見られる高齢者の七割以上が、「口腔(こうくう)機能低下症」の疑いがあることが分かった。 (安田功)

治療や予防で連動検証へ

昨年9月、口腔内の乾燥状況を調べるメンバー=いずれも愛知県東浦町で、県歯科医師会提供

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 調査は、東浦町に住む六十五歳以上の高齢者九百七十九人を対象に実施。昨年九、十月に行われた町の集団検診で、地元の歯科医師や歯科衛生士が口の中をチェックした。口と身体の関連についての大規模な調査は、全国で初めて。厚生労働省からの補助金も受けている。

 日本老年歯科医学会が一六年十一月に公表した診断基準によると、口の中の乾燥状態やかむ力、そしゃく機能、嚥下(えんげ)機能、舌の押す力などの七項目のうち、三項目以上で標準値より低いと、口腔機能低下症と診断される。検診では、「自分で日用品の買い物をしているか」「手すりや壁を伝わずに階段を上れるか」といった二十五の質問をもとに、心身の活力が低下した「フレイル」の状態にないかについても調べた。

高齢者らが集まった集団検診

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 その結果、口腔機能低下症の疑いがあると判定されたのは、全体の六割を超える六百四人。さらに、二十五の質問に対し、「いいえ」が四〜七つあってフレイル一歩手前と判断された二百四十二人のうち、低下症の疑いとされた高齢者は百七十四人に上り、71・9%を占めた。特に、かむ力やのみ込む力が弱い高齢者で身体の衰えが目立ったという。

 認知機能を調べるテストも併せて行ったが、口腔機能が低下するほど得点が低くなる傾向も明らかに。精神疾患を除き、おおむね口腔機能の低い人の方が、健康な人より病気にかかっている割合が高いことも判明。脳卒中が三・三六倍、がんが一・五六倍、骨粗しょう症が一・三三倍だった。

 歯科医師会の新道正規理事は「口腔と身体全体の相関性が、ある程度明らかになった」と調査の意義を評価。口が衰えると身体機能も低下する原因としては、食事量が減って栄養が偏ることなどが考えられるが、詳しい因果関係は分かっていないのが現状だ。

 調査二年目となる本年度は、あらためて町民対象の集団検診を実施する予定。その場で口腔機能低下症と診断できるよう、検査側の態勢を強化。診断された人には、早めに歯科医師にかかるよう呼び掛ける。また、口腔機能維持を目的に、首を左右に動かしたり、両肩をゆっくりまわしたりする運動を指導。それによって口の働きが改善した高齢者については、今後、身体の機能も改善したかどうかを検証する意向だ。口と体の健康が連動していることを証明した上で、よくかむ、よくしゃべるといった口の筋肉を鍛えるのに役立つ予防や治療を早期に始められれば、健康寿命を延ばせる可能性も出てくる。

 口の機能の低下は、食べこぼしが気になる、かめない食べ物が増える、むせる、滑舌が悪くなる−といったことが発見のきっかけになる。歯科医師会の内堀典保会長は「口腔機能の衰えを自覚しないまま、放置している人も多い。歯科検診の必要性などを訴えていきたい」と話す。中間報告を受け、厚労省東海北陸厚生局の堀江裕局長は「(八十歳で二十本以上の歯を保つことを目指す)『8020運動』の定着を図るなど、地域の教室で口腔ケアに関する活動を積極的に行う必要性を感じる」と指摘。「健康寿命を延ばすことは国の課題」と話し、調査を支援する方針を示した。

 

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