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がん教育で命考える 「道徳」で生徒ら議論白熱

 がんの正しい知識を伝えようと、全国の学校で行われているがん教育。これまでは体育・保健体育の授業での実施が中心だった。一方、教科化された「道徳」の時間を使い、がん教育を生き方や命について考える機会につなげようという動きが、小中学校で広がっている。 (編集委員・安藤明夫)

「よく生きることよく死ぬこと」をテーマにした生徒たちのグループ討議に助言する彦田泰輔教諭=愛知県尾張旭市の旭中で

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 三月、愛知県尾張旭市にある市立旭中の一年生のクラスで開かれた二時限続きの授業。担任の彦田泰輔教諭(42)が、道徳の時間に一年をかけてやってきた「がん教育」の最終回だ。がんとは何か、検診の大切さ、予防などをテーマに続けた授業は全六回になる。

 この日の教材の一つは、十六歳の小児がん患者、「ヨッちゃん」の実話に基づくエッセー。もう一つは、子どものがん患者らががんについて語り合うメディカルカフェ「どあらっこ」を名古屋市内で開く小児がん患者、中村航大さん(16)=同市守山区、大府特別支援学校高等部二年=を紹介するテレビ番組だ。

 死を恐れたり、元気な友達をうらやんだりしながらも、最期は感謝を胸に旅立ったヨッちゃん。病気の影響でまひした左半身のリハビリだけはサボりがちというが、いつも前向きな中村さん。二人を例に、彦田教諭は「自分の弱い部分、強い部分に目を向けて考えてみよう」と呼び掛けた。

 二人と年が近い生徒たちの議論は熱を帯びた。「うまくいかないと自分はすぐへこむ」「病気になったら明るく生きる自信がない」という意見が出る一方、前向きに生きる大切さを訴える生徒も。「悲しかったりつらかったりするのも、全部生きること。生きていることを大切にしたい」「人生は『今』を積み重ねること」という声には、一年の授業の成果が表れていた。

 「がん教育はどう生きるかを考えさせ、道徳にぴったり」と彦田教諭。教科書が扱う偉人と違い、身近に感じやすいのも大きい。彦田教諭ががん教育を始めるきっかけは、二〇一四年、妻かな子さん(48)の乳がん発症だ。髪が抜けるなど治療で容姿が変わること、すぐ死ぬわけではないこと…。かな子さんは三人の子どもに隠さずに話した。

 今、かな子さんは治療を続けながら、自ら設立したメディカルカフェで患者同士の支え合いの輪を広げている。幼い時からがんが身近だった高校二年の長男栄和(えいと)さん(16)は「どあらっこ」の中心メンバーだ。がん教育は彦田教諭の「ライフワーク」。クラス担任を外れる本年度も、道徳の時間に単発の授業を続ける。

小児がんで娘亡くした鈴木さん 経験基に本出版、教材に

教材にと本を出版した鈴木中人さん

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 教材作りも各地で進む。がん患者を支援する愛知県豊田市の鈴木中人(なかと)さん(61)=NPO法人いのちをバトンタッチする会代表=は三月、「子どものための『いのちの授業』 小児がんの亡き娘が教えてくれたこと」(致知出版社)を出した。六歳で亡くなった長女の誕生から死までを十章に分けて紹介。章ごとに「あなたのいのちは、あと六カ月と告げられたらどうしますか」などの質問を添えた。

考えるきっかけになる質問

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 学校でのいじめや心の病が増える中、「がん教育の一番の目的は命の大切さを伝えること」と鈴木さん。「今は予防や知識を伝えるだけにとどまっている例が多い」と残念がる。本は全国の教育委員会などに寄贈する。(問)同会=電052(581)8686、または出版社のホームページで。

 がん教育 2012年策定の第2期がん対策推進基本計画から盛り込まれた。がんを正しく理解する、健康と命の大切さを学ぶことなどを目指す。文部科学省の調査では、17年度にがん教育を「実施した」と回答した小学校は52・1%、中学校は64・8%、高校は58・0%。「体育・保健体育の授業」での実施が92・9%で最多。道徳は2・9%だった。

 

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