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地域の互助力と一体に  医療を核にまちづくり 

 体を治すだけでは足りない。地域ぐるみで高齢者を支える仕組みづくりが必要ー。超高齢社会の今、医療機関の役割を見つめ直すシンポジウムが二月、名古屋市内であった。情報交換したのは、ともに医療を核にしたまちづくりを進める名古屋市と北海道の二つの団体。地域の助け合いの力を高めるにはどすればいいか。シンポからヒントを探った。(編集委員 安藤明夫)

名古屋でシンポ先進2団体、活動発表

 名古屋から活動を報告したのは、会場となった南生協病院(名古屋市緑区)を運営する南医療生活協同組合だ。地域住民を含め、愛知県内に約九万人の組合員を持つ。長江浩幸院長が挙げたのは、二年前、がんで同病院に入院していた六十代の女性のことだ。

「定年後の男性の力を地域に」と語る松下繁行さん=名古屋市緑区の南生協病院で

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 女性は退院し、自宅で治療をすることになったが、寝室だった二階を使うのは体力的に無理。同年代の夫も要介護の状態だ。そこで書いたのが、名付けて「おたがいさまシート」。シートは「おたがいさま」の精神で地域の助け合いを進めようと二〇一五年に始まった。困ったことを書いて生協に出せば、助けてくれる人が現れる。この時も、生協常務理事で住民団体「男塾」の塾長、松下繁行さん(68)が、メンバーとベッドなどを一階へ移動させた。

いろいろな要望が書かれた「おたがいさまシート」

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 女性は自宅に戻ると、今度は「自分の死後、独りになる夫が心配」とシートに書いた。これを受け、生協は夫の住まいを世話。生協が運営する高齢者住宅に夫が入った翌日、女性は亡くなった。夫は今、男塾に参加。仲間と活動する中で元気を取り戻し、要介護の認定からも外れた。

 組合員や生協職員から出されるおたがいさまシートは、年間約三百件にも。内容は庭の草取り、行方不明の猫捜し、話し相手が欲しい−などさまざまだ。サポーターとして登録している組合員が対応することで、大半は解決できるという。中でも活躍が目立つ男塾は結成五年。メンバーは定年退職後の男性二十六人だ。松下さんは「ありがとう、の言葉で元気が出る。メンバーは、高血圧、がんなどみんな病気持ちだけど生き生きしている」と笑顔だ。

 昔はどの地域にもあった住民の結びつきが薄れている現代。生協の試みは、助ける側、助けられる側双方に元気をもたらしている。長江院長は「病院だけでは対応できない悩みに、地域で対応できるのが私たちの強み」と胸を張った。

 北海道の例を紹介したのは、札幌市で月一回、地域医療などについての市民向け勉強会を開く「まもる会大学」だ。中心メンバーの医師、永森克志さん(46)が岩見沢市で営む「ささえるクリニック」は、近くに住民が自由に立ち寄れる「まるごとケアの家岩見沢」を設けている。もとは空き家だった場所。中では、体操教室や風邪の予防に関する勉強会などさまざまな催しがあり、看護師らが健康相談に乗る。必要なら治療にもつなげるという。

活動について話す永森克志さん(右)ら「まもる会大学」のメンバー=南生協病院で

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 永森さんは〇六年に財政破綻した夕張市で、市立病院から移行した公設民営の診療所で働いたことがある。そうした経験を基に、人口減で地域の病院が減っていく未来を見据え、「健康を守るための予防医療と、在宅医療が大切」と強調する。その上で「自分たちが住む地域に愛情と覚悟を持つことが、地域の未来につながる」と説明。「まるごとケアの家」で住民同士の交流や助け合いを進めることに加え、事務職として採用した地元の若者に医療関係の資格取得を促すなど人材の育成にも努めている。

 高齢者の孤立や貧困は深刻さを増している。永森さんは南医療生協の取り組みを高く評価し、「大事なのは、地域全体で目の前にいる人の笑顔を支えること。医療や介護はその手段の一つにすぎない」と話した。

 

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