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流産・死産繰り返す「不育症」 名市大院教授・杉浦真弓さんら 学会を設立

正しい情報広めたい

 妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」。研究と治療に長年取り組む名古屋市立大大学院産科婦人科の杉浦真弓教授(58)らが日本不育症学会を設立、医師らが研究成果を発表する初めての学術集会を三十日に名古屋市内で開く。杉浦さんは「患者は多いのに、これまで専門の学会はなかった。これを機会に不育症の認知度を上げていきたい」と話している。(小中寿美)

週に1度の不育症外来で患者に検査結果を伝える杉浦真弓さん=名古屋市瑞穂区の市立大病院で

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 名古屋市立大病院(同市瑞穂区)の産科婦人科で、毎週月曜の午後に開かれる不育症外来。一人目を出産した後、三回流産した愛知県内の女性(38)が検査結果を聞きに訪れた。

 検査で分かる不育症の原因には▽血液が固まりやすく、胎盤などの血流が滞る危険がある抗リン脂質抗体症候群▽夫婦どちらかの染色体異常▽子宮奇形−などがあるが、夫の染色体も含めて女性は異常なし。杉浦さんが「薬は必要ない。次の妊娠で60〜70%は出産できる」と説明すると、女性は安心した顔を見せた。

 不育症は流・死産を計二回以上繰り返し、子どもが得られない疾患。流産が三回以上続く疾患「習慣流産」も含み、患者の対象が広い。国の調査によると、国内では妊娠を経験した女性の5%が不育症患者と推計される。患者の多さにもかかわらず認知度は低く、愛知県が二〇一三年、二十〜四十四歳の男女を対象に行った調査では、57%が「全く知らない」と答えた。

 「葉酸で流産を予防できる」など、インターネット上には不確かな情報が出回る。この日も「葉酸を取った方がいいですか?」と女性。葉酸は、二分脊椎症をはじめ、胎児の「神経管閉鎖障害」の発生率は下げられるが、流産を防ぐ効果はない。研究に裏打ちされた杉浦さんの説明に、女性は何度もうなずいた。

 患者だけでなく、医療現場も混乱している。不育症で治療法が確立されているのは抗リン脂質抗体症候群だけ。血液をさらさらにする飲み薬と注射を使えば、予防できる。しかし、医師の中には「何もしないと不安」という患者の求めに応じ、保険適用外の自由診療で効果もない薬を出してしまう人も。「不育症治療がビジネスに結びついている」と杉浦さんは懸念する。

 専門学会の設立には、こうした状況を変え、正しい情報と治療を広めたいという狙いがある。不育症で親の側に原因があるケースは30%。研究では、胎児側の染色体に異常がある例が40%を超えるという。ただ、通常、流・死産の際に胎児の染色体は調べないため、患者全体の半数以上は「原因不明」として扱われる。

 原因不明でも一定の確率で出産は見込める。日本の平均出産年齢三一・九歳で見ると、二回の流産後で80%、三回で70%、四回で60%、五回で50%。また、子宮奇形、夫婦の染色体に異常がある場合でも治療なしで出産している人がいる。これらを知っていれば、むやみに情報に振り回されることはなくなる。

 不育症の治療は、免疫や遺伝、手術技術など幅広い専門分野にまたがって進めることが必要だ。学会設立への期待は大きく、前段階として一七年十月に開いた学術講演会には若手の医師ら百人を超える参加があった。学会は、医師に加え看護師や心理士、遺伝カウンセラーら二百人規模になる見込み。発足後は、欧州生殖医学会がまとめた不育症治療のガイドライン(指針)の翻訳に取り組むほか、不育症の治療ができる医師を認定し、公開することも予定している。「専門的な研究を深めるだけでなく、患者の受診に役立つ情報を提供したい」と杉浦さんは意気込んでいる。

     ◇

 学術集会の会場は名古屋市中村区名駅のJPタワー名古屋三階ホール。午後四時からの杉浦さんの教育講演は、市民公開講座を兼ね、無料で受講できる。当日参加も可。(問)同大教育研究課=電052(853)8077

 

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