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医療

がん患者に心の“処方箋” 名古屋の「ピアネット」設立10周年

就労など相談業務拡充

 NPO法人ミーネット(花井美紀理事長=写真)が名古屋市との協働で運営する同市がん相談情報サロン・ピアネット(同市中区大須4)が10周年を迎え、30日に記念フォーラムを開く。がん経験者が患者や家族ら訪れる人の相談に乗る「ピアサポート」では先駆け的な存在。医療技術の進歩で働きながら治療を続ける患者が増える中、就労支援などにも事業を広げている。 (編集委員・安藤明夫)

10周年を迎えたサロン「ピアネット」。患者支援の事業が広がっている=名古屋市中区大須で

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 サロンは、二〇〇九年三月、同区丸の内に同市が開設。一七年に今の地下鉄上前津駅前のビルに移った。広さ約八十平方メートルのフロアに、自由におしゃべりができる交流スペースや図書コーナー、プライバシーに配慮した相談室などがある。

 きっかけは、〇五年からがん患者を支援してきたミーネットが「忙しい医師は患者の不安や疑問に向き合う余裕がない。患者同士が集まれる場が必要」と同市議会に請願を出したこと。今でこそ「ピアサポーターが常駐するサロン」は全国に数カ所あるが、開設当時は例がなかった。

 相談は薬の副作用や再発の不安、治療への不満など幅広い。闘病経験を持つサポーターによる支援は気持ちが分かる分、大きな力になる。半面、医学的な知識の不足や思い込みが問題になる例も。そのため、ミーネットが行うサポーター養成の研修は、医師らを招いてがんの基礎知識や面接の技術などを学ぶ座学と医療現場での実習の計九十五時間、一年間をかけている。

花井美紀さん

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 これまでに研修を終えた人は百七十八人(男性四十七人、女性百三十一人)。このうち七十人(男性十三人、女性五十七人)が活動中だ。花井さんが忘れられない一人が、一四年に五十三歳で亡くなった鈴木真弓さん。ステージ4の肺がんで余命六カ月とされながら、三年半の間、ピアサポート活動に情熱を注ぎ、多くの患者に希望を与えた。「誰かの役に立つことで、自身も喜びと力をもらえるのがピアサポート」と話す。

 サロン利用者は一八年に初めて年間三千人を超え、電話相談も一日平均六・九件と初年度の三倍近くになった。乳がんや肺がんなど部位別の会、薬の副作用、食事といったテーマを決めて話し合う会など、患者会の活動も活発だ。

 今、力を入れている事業の一つが、治療と仕事を両立するための支援だ。日本では年間約百万人が新たにがんと診断されるが、その約三割が働く世代の二十〜六十四歳とされる。一六年からサロンで毎月開く就労に関する相談会では、求職の際、自分の症状や可能な働き方についてどう伝えるかなどを具体的にアドバイス。毎年一回、全国健康保険協会愛知支部と組んで三百〜四百人規模のフォーラムも開催している。

 他にも市内各地への出張講座、若いがん患者の在宅ターミナルケア支援に取り組むほか、新年度からは市内のがん診療連携拠点病院に相談ブースを設ける。ウイッグ(かつら)など治療に伴う外見の変化への支援にも乗り出す予定だ。

 花井さんは三十年近く前、父を大腸がんで亡くした。本人に病名を隠したままだったことが、患者主体の医療を目指すことにつながった。「治療の選択肢が増えている今、『もっと早く来ていただければ有益な情報を提供できたのに』と思うこともしばしば。サロンが広く知られるように努めたい」

30日にフォーラム

記念フォーラムは三十日午後一時半から、名古屋市中区栄四、同区役所ホールで。愛知医科大の上田龍三教授が「免疫療法でがん治療は新たなステージへ」の演題で講演。同市でがん患者のメディカルカフェを主宰する彦田かな子さん、若年がん患者の山本翔太さん、ピアサポーター釘貫由美子さんらのパネル討論などがある。無料。二十三日までに氏名、住所、参加人数、連絡先、ピアネットを利用したことがあるかどうかを書き、ファクス052(243)0556、またはピアネットのホームページから申し込む。(問)同ネット=電052(243)0555

 

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