トップ > 特集・連載 > 医療 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

医療

「無痛分娩、体制充実図る」 名市大病院・田中基センター長に聞く

 名古屋市立大病院(同市瑞穂区)で昨年十二月、出産時の痛みを緩和する無痛分娩(ぶんべん)実施と人材育成を担う「無痛分娩センター」が発足し、今年一月に最初の出産が無事に終わった。産科麻酔に精通した同センター長の田中基医師(52)が本紙のインタビューに応じ、週二回、無痛分娩を実施している現体制を拡大していく考えを示した。 (聞き手・安田功

課題は人材育成と安全性

写真

 −無痛分娩の利点は。

 個人差はあるが、痛みは自然分娩の時を「全力疾走」とすると、無痛分娩は「ジョギング程度」。呼吸など体への負担を和らげられるはずだ。痛いと血圧が上がったり呼吸がきつくなったりするため、さまざまなリスクが考えられる。大動脈瘤(りゅう)の破裂もありえるし、胎児が一時的に危険な状況になることも予想される。

 −日本で浸透しない理由は。

 欧米では一九七〇年代から、女性の社会進出に合わせて広がった。体の負担が少ない分、職場への早期復帰が望めるからだ。欧米の場合、出産は大病院が主流だが、日本は開業医。マンパワーが不足しており、手が回らなかった。

 自動車産業が集積する米・ミシガン州に駐在する日本人家族の実施率は、現地の人と変わらないと聞く。母親の需要は高まっており、体制整備が進めば一気に増えるはずだ。

 −事故が相次ぎ、一時、危険性が指摘された。

 硬膜外に投与すべき麻酔を、奥にあるくも膜下に誤って入れてしまい、妊婦が麻酔薬中毒となる事故が目立つ。また、危険があるとの前提で、麻酔の投与は少しずつするべきなのだが、開業医の中には、知識が乏しく、一気に大量投与する人がいた。産科医とは別に、麻酔医が関与するべきだ。

 −名市大病院の体制は。

 今は計画分娩の上、実施は週二回だけ。二十人ほどいる麻酔科医が全員対応できるよう指導して、四月以降は平日に毎日できるようにしたい。将来的には二十四時間三百六十五日体制を目指す。

 現在は医学部の授業でも、無痛分娩はほとんど教えられていない。安全に実施できる医療機関を増やすには人材育成が大事だ。

 たなか・もとし 1966年生まれ。堺市出身。滋賀医科大卒業。15年ほど前から産科麻酔に携わり、カナダ・トロント大や埼玉医科大勤務などを経て、昨年12月から現職。

1例目の尾嶋さん 出産日決め準備できた

無痛分娩で産んだ男の子を抱く尾嶋あゆみさん

写真

 名古屋市立大病院で無痛分娩の第一号となり、一月七日に男の子を産んだ名古屋市名東区の会社員、尾嶋あゆみさん(38)は「痛みを感じないまま出産し、不思議な感覚だった」と振り返った。

 尾嶋さんは関東地方に住んでいた三年前にも、近くの病院で無痛分娩で長女を出産した経験がある。出産日を一月七日と決めたのは昨年十二月末。「前もって、長女を夫の実家に預けるなどの準備ができた」と明かす。三年前は少し痛みがあったが、今回はなかったため、助産師に陣痛のタイミングを教えられ、いきんだ。「いつ痛くなるのかなとドキドキしていたら、そのまま生まれて驚いた。やって良かった」と話した。

 初めて無痛分娩に立ち会った医療従事者も手応えを感じている。助産師の若林加菜子さんは「痛みがないので、分娩中にお母さんと今後の育児に関する相談ができた」と評価。産婦人科専門医の沢田祐季さんは、妊婦がいきみにくくなるため、吸引分娩などが増える可能性を指摘。「より安全に進められるよう、トレーニングを積む」、助産師長の石川美江さんは「小児科医や助産師とも連携しながら、勉強会をやっていきたい」と話した。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索