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 患者らAYA研が学術集会  若年がんに幅広い支援を

進路や容姿の悩み「理解広げたい」

 白血病を公表した競泳の池江璃花子選手(18)ら思春期や若者の「AYAがん」=メモ参照=は、人生の目標に大きな影響を及ぼすことも多く、多様な支援が必要になる。11日に名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開かれた「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」(AYA研、事務局・名古屋市)の第1回学術集会から、患者ニーズについての発表を紹介する。(編集委員・安藤明夫)

闘病経験をもとに「ピアサポートを広げたい」と話す松井基浩さん=いずれも名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で

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 AYA研は若年性がん患者の支援にかかわる人材の育成、ネットワーク構築などを目指して医療者や患者らが連携し、昨年設立。初の学術集会で、課題などを話し合った。

 発表者の一人で、東京都立小児総合医療センター(府中市)の血液がん専門医・松井基浩さん(32)は、高校一年のときに血液がんの悪性リンパ腫を発症。入通院した経験をもとに「最もつらかったのは、高二の秋に復学した時」と語った。

 抗がん剤の副作用で髪の毛がなくても病棟では当然だったが、学校では奇異な目で見られる。体育の授業は見学で、みんなと同じことができなかった。

 がんになった経験を生かそうと病床で医師を志したが、休学のブランクや体調から思うように勉強もできず、授業にもついていけない。「もう限界だと思ったとき、励ましてくれたのが、病棟の友達でした」

 闘病仲間に「絶対、医者になれ。おまえにしかできないことがある」と激励された。夢を追える自分は幸せだと気づき、受験勉強に集中。現役で国立大の医学部に合格できた。

 そんな体験から、対等の立場で支え合う「ピアサポート」の力を実感し、在学中の二〇〇九年に若年性がん患者団体「スタンドアップ!!」を結成。各地で交流会を開き、フリーペーパーを全国のがん拠点病院に置くなどしてきた。

 AYA世代の患者の悩みは多様だ。パートナーに病気のことをどう伝えるか、就職試験で病名を告げるほうがいいかなど、画一的な答えを出せない問題には、医療者の意見より患者同士の対話が力になるという。

 松井さんは「ピアサポートを広げるためにAYA研を中心にして地域ごとに患者団体と医療機関が連携し、全国ネットワークを築くことが必要」と提案した。

 公益財団法人「がんの子どもを守る会」(東京)のソーシャルワーカー樋口明子さんは、同会に寄せられるメール・電話相談の45%が患者年齢が十六歳以上のケースで、「小児がんの治療終了後の相談が増えてきた」と話した。

 子どもの慢性の特定疾患に対する医療費補助が二十歳までに打ち切られることなどによる経済的な問題、就労など自立への課題、「迷惑をかけた」という家族への負い目、身長が伸びないなど容姿の問題、不妊、合併症、成人後に発症する二次がんなど、相談内容はさまざま。治療後に症状がないと、幼少期に医師から説明された内容を覚えていないケースもあるという。

 「本人が自分の体のこと、これから起こりうることに気づき、受け入れていけるように、十分な情報が提供されることが重要」と樋口さんは強調した。

AYAがんのさまざまな課題へのネットワークづくりを呼びかける堀部敬三さん

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 AYAがんは昨年、国のがん対策推進基本計画(第三期)で柱の一つに掲げられた。だが、医療関係者にも十分理解されておらず、AYA研の理事長を務める堀部敬三・国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市)臨床研究センター長らの研究では、がん診療に携わる医師でも言葉の意味を知っているのは61%にとどまった。

 同集会の翌日には池江選手の発病が公表され、若年性がんへの関心が高まっている。堀部さんは「AYA世代の患者がかかえるさまざまな困難さ、支援の大切さについて、正しい理解を広げていきたい」と話す。

 AYAがん adolescent and young adult(思春期と若年成人)の略。一般的に、15歳から39歳までのがんを指す。小児がんの長期闘病や、晩期合併症、二次がん、治療の後遺症も含む。この世代には、進学、就職、結婚、出産など人生の重要イベントが集中し、小児や中高年とは異なる問題を抱えやすい。

 

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