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医人伝

愛知たいようの杜訪問看護ステーションふれあい(愛知県長久手市)管理者伊佐治知加子さん(49)

利用者、家族の思い尊重

 愛知県長久手市の山中に広がる「ゴジカラ村」。木のぬくもりを感じさせる福祉施設、幼稚園などが立ち並ぶ。「ゆったりと時間が流れる暮らし」が村のモットー。ただ、市内の在宅療養者の生活を支える訪問看護ステーションの日々は忙しい。「私たちは『ゆったり』に浸ってはいけない」と笑う。

利用者・家族本位の看護への思いを語る伊佐治さん

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 「組織のルールも大事だけれど、利用者の思いを尊重したい」と看護の理想を模索してきた。十六年前、村に来て訪問看護の世界を知った時、「これが目指していたゴール」だと思ったという。

 愛知県新城市の高校時代、母親を乳がんで亡くした。病院でみとった後、悲しむより先に家に走った。「お母さんの寝床を用意しなくちゃ」。気丈で責任感の強い少女だった。そうした経験が、目指す看護観につながった。

 准看護師の専門学校に通いながら働いた病院では、看護に対して熱意がない雰囲気が苦痛だった。正看護師を目指して短大に進み、志したがん看護の世界では「なぜ病院でみとらなくてはいけないのか」という疑問が湧いた。介護職と共に働いた老人保健施設などでは、職種を超えた連携に苦労した。

 ゴールと思ったゴジカラ村も、父親が肺がんを発症したことなどから、いったん離れることに。幼い男の子二人を育てながら、治療が難しくなった父を自宅で世話し、半年後にみとった。患者、家族のための看護への思いは、ますます強くなった。

 他の事業所で訪問看護の経験を積んだ後、六年前、ゴジカラ村に戻った。管理者となった今は、在宅ケアを支える関係事業所との連携に力を注ぐ一方、自ら訪問看護に出向くことも多い。

 もう一つ、力を入れるのが、二〇一六年に有志とともにつくった「長久手いのちの学校」。公共施設などを借りて開く「たつせカフェ」が活動の中心だ。がん患者の話に耳を傾けたり、子育て世代と先輩世代が交流したり、さまざまな世代、人が集って「命」について考える。カフェの名前「たつせ」には、一人一人の立場、立つ瀬になって考え、福祉をより充実させていこうという願いを込めた。

 「一人一人が主体的に命に向き合えば、みんなが元気になる。それは元気なまちづくりにもつながる」 (編集委員・安藤明夫)

 

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