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医人伝

福井県立病院(福井市)消化器内科医長砂子阪肇さん(46)

途上国の肝炎治療 尽力

「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の治療に取り組む砂子阪さん

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 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の専門医。肝臓にはさまざまな病気があるが、初期は自覚症状がほとんどない。気付かずに放置すれば、肝硬変や肝がんにつながる危険も。「検査すら受けていない患者を一人でも救いたい」と、病院での治療に加え、市民向けの公開講座で知識の普及にも努めている。

 富山県射水市出身。心臓の具合が悪かった父親を治療したいと、小学生のころから医師を志した。金沢大卒業後は同大病院に所属し、二〇一三年には消化器内科の助教に。一七年から福井県立病院に勤務する。

 日本では現在、約三百万人がウイルス性肝炎に感染しているとされる。「ターニングポイントになった」と話すのが、金沢大病院時代に参加した世界保健機関(WHO)の活動だ。世界のウイルス性肝炎患者の三分の一は環太平洋地域にいるといわれ、WHOもアジアでの肝炎撲滅に力を入れる。一五〜一六年の半年間、WHO西太平洋地域事務局の協力研究員として肝炎対策に取り組んだ。

 日本では、過去十年間で肝炎の治療が格段に進歩した。検査体制が整い、今では内服薬で治ることも多い病気だ。一方、フィリピンやカンボジアなどの発展途上国では検査キットも不足している。肝炎患者の正確な人数さえ分からなかった。

 そこで肝炎治療のガイドラインや、分かりやすい治療についての資料作りに尽力。各国で医療や衛生を管轄する保健省と交渉を重ね、普及に努めた。「すべての人が肝炎の治療を受けられる社会的な仕組みづくりが大切」と実感したという。

 帰国後、福井県立病院でつくり上げたのが「アラートシステム」だ。消化器内科以外を受診した患者から、血液検査で肝炎の陽性反応が出ると、検査担当者から直接メールが届くようにした。毎月十人ほどの通知があり、治療につなげている。「足元の患者から救いたい」という思いが、背景にはある。

 肝臓病は、酒の飲み過ぎが原因となる場合も。こうした生活習慣に関わるものは、ウイルス性と違い、自分の意思で発症を防ぐことが可能だ。「通院がいいか入院がいいかなど、患者の人生や人生設計に寄り添って治療ができる」と語り、「常に研究を続け、世界最新といわれる治療を福井で受けられるようにしたい」と意気込む。(籔下千晶)

 

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