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医人伝

彦根市立病院(滋賀県)医療通訳多菊エリカさん(57)  文化の違いにも心配り

「不安を和らげられるよう配慮して通訳をしている」と話す多菊さん

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 製造業などの働き手として、国内で増え続ける外国人。定住していれば病気になることもあるが、言葉や文化の壁から受診に不安を感じる人も多い。そんな彼らをポルトガル語とスペイン語の医療通訳として支える。

 ブラジルのサンパウロ市出身の日系二世。二〇〇六年から島根県の派遣会社で、そこに登録する外国人を支援する通訳として働いた。しかし、〇八年のリーマン・ショックの影響で失職。就職に有利になるとして、ハローワークで介護福祉士の勉強を勧められ、一一年に資格を取得した。就職した介護施設で出会ったのは、加齢や障害によって周囲との意思疎通が難しい人たち。「コミュニケーションができないと、同じ日本人同士でも孤立する。言語が違えばなおさら」と、病院などで医師らとのやりとりを助ける医療通訳の仕事に関心を持った。

 彦根市立病院に就職したのは一三年。「聞いたことのない病名、説明が難しい症状。毎日が勉強でした」と振り返る。病名はもちろん、病気になる原因や背景も知らないと的確な通訳はできない。今も、新しい症状に出合うたび、インターネットで調べるなどして勉強を重ねる。

 日本と母国の間に横たわる文化の違いに戸惑う患者は少なくない。ブラジルでは、軽い病気でも患者がコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)といった高度な検査を求めれば、病院側は応じることが多いという。だが、日本では、医療上必要がない場合、医師が認めない場合も。「患者が不安がった時には医師に伝え、交渉することもあります」

 もう一つ、ブラジル人の多くはキリスト教を信仰し、重い病気でも「神様に祈れば道は開ける」と信じる傾向がある。そうした宗教的な背景から、がんなど深刻な病気を告げる際には、診断の結果は正確に伝えながら「良くなるよう祈りましょう」などと励ましの言葉を添えることも。患者が安心できるようサポートすることで「症状が良くなり、喜んでくれることが何よりのやりがい」と話す。

 伝え方次第で患者の命にも関わる重大な仕事だが、日本では医療通訳に関する公的な資格や養成システムはない。高額の通訳料を払って個人で通訳を雇う患者もいる。「これから外国人はもっと増える。外国人の健康について企業や行政がもっと考えてほしい」 (森田真奈子)

 

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