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医人伝

名古屋市立大脳神経化学研究所(名古屋市瑞穂区)認知症化学分野教授 斉藤貴志さん(46) モデルマウスを開発

 認知症患者全体の六割以上を占めるとされるアルツハイマー病。その病態を忠実に再現するモデルマウスを、二〇一四年に開発した。欧米や中国など世界中の約四百の研究施設や製薬会社で活用され、予防や治療に向けた研究を下支えしている。

アルツハイマー病のモデルマウスを開発した斉藤貴志さん

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 福岡生まれの熊本育ち。〇二年に大阪大で医学博士を取得し、理化学研究所(理研、埼玉県和光市)に赴任した。大阪大在籍時は骨の病気やがんを専門としたが、同じ頃、母方の祖母が認知症を発症。今の研究に向かう転機になったと振り返る。

 初孫だったことから、格別の愛情を注いでくれた祖母。なのに「病院を見舞うと『あの体の太(ふと)か兄ちゃん、私の金ば取りに来た』と。言葉を失うほどショックだった」。他の患者家族に同じ思いをさせたくないと、認知症克服の基礎研究を志した。

 アルツハイマー病のモデルマウスは一九九〇年代から米国発のものが存在していた。だが、原因不明の突然死などの問題が少なくない頻度で発生。そのマウスは、発症の原因となるタンパク質を発現させる遺伝子を過剰に加える方法で生み出されていた。

 そこで、取り組んだのは、遺伝子を加えるのではなく、マウスの遺伝子を入れ替える手法だ。今でこそ狙った遺伝子を改変する「ゲノム編集」技術は一般的だが、当時はまだ確立していなかった。無数のパターンを地道に試す日々が続いた。「心が折れたのは一度や二度ではない」。約十年の歳月をかけて新しいモデルマウスの開発に成功。一四年の論文発表直後から、マウスの提供や共同研究を求める声が殺到した。「理研では日夜マウスの世話に追われていた」と笑う。

 がんなど他の疾患に比べ、認知症の病態解明や治療法の研究が遅れてきたのは、適切なモデル動物がいなかったからとも指摘される。「根治薬の開発など、一朝一夕で成果に結び付くわけではない。でも大きな前進には違いない」と自負する。

 今秋、名古屋市立大が新設した脳神経科学研究所の教授として、理研から招かれた。愛知県内には国立長寿医療研究センター(大府市)や名古屋大環境医学研究所(名古屋市千種区)など認知症研究の先端施設がある。「アルツハイマー病研究のハブ(中核)として存在感を示せたら。名古屋から世界へ成果を発信していく」 (安藤孝憲)

 

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