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医人伝

城戸照彦さん(66)金沢大(金沢市)客員教授 続く枯れ葉剤被害支援

ベトナムの支援にかける思いを語る城戸さん

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続く枯れ葉剤被害 支援

 一九七五年まで続いたベトナム戦争。当時、米軍がまいたダイオキシンを主成分とする枯れ葉剤の影響について、二〇〇二年から現地で調査を始めた。終戦後四十年以上が過ぎた今もなお、健康被害は続く。母親たちの母乳からはダイオキシンが検出され、さらにその濃度が高い地域ほど二・五キロ未満の低体重児が生まれる割合が高いことを突き止めた。

 「自分の研究成果を、被害を食い止めることに役立てたい」。今夏から三年間、国際協力機構北陸センター(JICA北陸)の支援を受け、現地の人に早めの離乳の必要性や、医療の知識を広める活動に乗り出した。八月には医療関係者ら四十五人を対象に研修をスタート。十月からは医師一人を日本に招き、体内のダイオキシン濃度などを調べる精密機器の扱い方を学んでもらっている。

 横浜市生まれ。全国的に公害が大きな問題になった一九六〇年代に青年時代を過ごした。組織的な衛生活動によって人々の健康を守ることを掲げる公衆衛生学との出合いは、金沢大医学部三年の時。参加したワークショップで、金沢特産の九谷焼の絵付け職人に貧血の患者が多い理由を探った。原因は、絵付けに使う鉛だった。

 「鉛が体内に入らないよう指導をすれば、疾患は予防できる。公衆衛生は社会に貢献できる学問だと知った」と振り返る。その後、対策が進み、今では鉛を原因とする貧血に悩む職人はほとんどいない。

 同級生の多くが内科や外科といった臨床に進む中、同大学院で公衆衛生を専攻。富山県の神通川流域で発生した四大公害病の一つ、イタイイタイ病の原因を、上流の鉱山から流出したカドミウムと立証した故石崎有信さんのもとで研究を重ねた。

 八六年からは石川県小松市の梯(かけはし)川流域の土壌汚染を調査。上流の尾小屋鉱山から流れ出るカドミウムを摂取した人の腎機能障害は、時間がたってもほとんど改善しないことを三十年かけて証明した。「環境汚染による健康の被害は、想像以上に長く続く。ケアをする側も、疾患を持った人と長きにわたって寄り添っていく必要がある」と話す。

 ベトナムも、まだまだ先は長い。「息の長い取り組みを続けていくつもりです」。柔和な笑顔の奥に、固い決意がのぞいた。(小佐野慧太)

 

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