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NPO法人えがお 理事長 鳥井謙祐さん(46)=富山県高岡市。 線維筋痛症仲間と活動

「現実的な活動にフォーカスしている」と話す鳥井謙祐さん=富山市で

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 全身を激痛が襲い、痛みで髪や爪も切れない。日常生活が困難なほどの疲労感が半年以上続く。前者は線維筋痛症、後者は慢性疲労症候群(CFS)の主な症状だ。併発する人も多い。その両方の患者と医療者で昨年結成したのが富山県高岡市の「NPO法人えがお」。線維筋痛症を患いながら理事長を務める。

 同市出身。東京で外資系IT企業の営業職として働いていた二〇一一年ごろから、胸の辺りをこん棒で突かれるような、ガラスの破片で引っかかれるような痛みに襲われ始めた。しかし、当時は毎週、海外出張があるほど忙しかった。悩みながらも仕事を優先。はり治療に通うのが精いっぱいだった。

 痛みは徐々にひどくなり、二年後には我慢できないほどに。ありとあらゆる総合病院に出向き、画像・血液検査、磁気共鳴画像装置(MRI)で診てもらったが異常は見つからない。医師から「(診断書に)痛いって書けばいいの?」とぞんざいに言われたことも。結局、仕事を辞めて富山に戻った後、専門医がいる県立中央病院で線維筋痛症と診断された。最初に痛みを感じてから六年が過ぎていた。

 国内の患者数は線維筋痛症が二百万人、CFSは三十万人と推定される。線維筋痛症の痛みの原因ははっきり分かっていないが、痛みを抑制する神経伝達物質の機能障害から起こるといわれる。病気そのもので死に至ることはないが、痛みに耐えられず、あるいは経済的に立ちゆかなくなって自ら命を絶つ人もいる。認知度の低さから医療者や身近な人からも理解されず、孤立する患者は多い。実際、えがおへの相談の半数が、医療以外の面に関わることという。

 病名が分かるまで悩み続け、苦しみを周囲に分かってもらえない経験をした当事者だからこそ、「生きていくことの大変さを身をもって知っている」。えがおでは、患者会の結成や医療者向けの講座の開催など「目の前の患者を支援したり、診断できる専門医を増やしたり、現実的な活動に的を絞っている」。

 今も体調には波があり、外出がままならない日もある。それでも同じ疾患に悩む仲間と富山から発信を続ける。十月には全国に十数人しかいないCFSの専門医を増やそうと、富山市で医療者向けの講演会を開く。地道な活動だが「時間をかけてでも患者を取り巻く状況を改善していきたい」。 (柘原由紀)

 

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