トップ > 特集・連載 > 医療 > 医人伝 > 記事

ここから本文

医人伝

福井県済生会病院(福井市) 緩和ケア病棟音楽療法士 柴田麻美さん(41)  思い出リンクし癒やす

「がん患者自身が自然と本来の自分を思い出せるのが音楽のよさです」と話す柴田さん

写真

 音楽の力で心や体を癒やす音楽療法。日本音楽療法学会が認定する療法士は今年三月現在、全国に約三千二百人いるが、常勤職員として、緩和ケア病棟で活動する人は珍しい。「音楽をきっかけに、大事な安らぎの時間を過ごしてほしい」と、末期がん患者の支援に力を入れる。

 二十床の病棟で、毎日三、四人の患者に向き合う。特製のキーボードスタンドを押して患者の個室へ。「ご気分いかがですか」「思い出すことはありましたか」などと会話をしては、リクエストに応じて演奏する。この日、ある年配の女性患者が頼んだのは、山口百恵さんの「秋桜(コスモス)」。ただ演奏するのではなく、心地よく聞いてもらえるよう、表情や反応を見ながら、テンポや音量を合わせていく。

 寄せられるリクエストは演歌からフォークソング、歌謡曲まで多岐にわたるため、一万曲以上の楽譜を用意。患者の書いた歌詞に合わせて一緒に曲を作ったり、演奏したりもする。常勤で、毎日患者と接することができるのは大きな強みだ。日々の触れあいを通じて、患者が前向きな気持ちを持てるよう知恵を絞っている。

 音楽療法は、患者の体をリラックスさせるだけでなく、懐かしいメロディーをきっかけに昔を思い出すといった心理的な効果が期待できる。「学校で歌った曲や、好きな人と聴いた音楽…。どの人も、音楽は大事な思い出とリンクしているんです」

 がんでそれまでの暮らしが一変し、治療生活に入った患者にとって、病院は非日常の場。常に病気や死が身近にあり、つらいことも多い。「でも、音楽を聴くと、ふと日常に戻れるんです。無理に日常に戻ろうと頑張らなくても、自然にそうできるのが音楽のすばらしさ」

 もとはフルート演奏が専門。音楽療法を知ったのは、広島大教育学部の学生の時だ。音楽心理学の門をたたき、同大大学院生物圏科学研究科で博士号を取得した。結婚して夫の勤務先のある福井県に移り、二〇〇七年一月から県済生会病院で働く。

 「臨床での経験を研究にも生かしたい」と願う。昨年十二月には、医療や教育の現場などで心の健康をサポートすることを目的に新設された国家資格「公認心理師」の資格も取った。若いがん患者が増える中、親ががんになった小学生らの心のケアにも取り組むなど、活動の場を広げている。 (今井智文)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索