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滋賀医大(大津市)社会医学講座 法医学部門教授 一杉正仁さん(49) 事故を予防 遺族ケアも

 「明日からがん患者の数を半分にすることは難しい。でも、交通事故の死者数を半分にすることは、やりようによってはできると思うんです」。専門は交通事故の予防医学だ。事故の原因や当時の天候、状況、亡くなった人の死因などを明らかにして、事故予防につなげる。

「死因を明らかにして、再発防止のための情報を伝えたい」という一杉正仁さん

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 東京都出身。東京慈恵会医科大を卒業後、内科医として勤務した川崎市の病院でのことだ。目の前で患者が突然死した経験から、死因の究明に関心を持った。以降、妊婦や胎児の交通死亡事故の事例を調査。法律で一部免除されている妊婦のシートベルト着用の必要性を訴えてきた。虐待や事故による小児の死亡例を調べ、再発防止に結びつける「チャイルド・デス・レビュー」の制度化も目指す。

 もう一つ、力を入れるのが、突然の事故などで大切な人を亡くした遺族の苦悩や悲しみのケアだ。栃木県警の嘱託医をしていた二〇一一年、鹿沼市で運転手のてんかん発作のためクレーン車が暴走し、小学生六人が亡くなった。「ご遺体は悲惨な状態だった。十分前に『いってきます』と、元気に家を出たわが子の亡くなった姿を目の当たりにした親の気持ちは、いかばかりかと」

 この時のつらい思いを基に、一四年に滋賀医科大に移った後、遺族の相談窓口を大学内に設置した。精神保健福祉の機関などと手を結び、相談を専門家につなげる支援態勢を試みる。

 遺族の心に寄り添うことに力点を置く姿勢は、県などが主催し、自らが会長を務める滋賀県死因究明等推進協議会が参加する大規模災害訓練でも貫かれる。遺族に遺体を引き渡す際、どういう対応をするべきかを訓練に取り入れた。「医療関係者や警察官の心ない言葉によって、遺族が傷つく二次被害はあってはならないから」と言い切る。

 一五年に発足した推進協は、県や捜査機関、医師会が連携して、死体検案や解剖を適切に行うための態勢づくりが目的だ。他機関と広く協力して社会に提言していく原点は、駆け出しの川崎時代にある。近隣の歓楽街から運ばれてくる患者は、傷害事件の被害者や薬物中毒者が少なくなかった。患者の背景に広がる社会のありさまに目が向くようになったという。「医学は社会とつながっている。医者は診察室で患者を待つだけではいけない。外に出ていかなくちゃ」 (芳賀美幸)

 

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