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特集 防ごう!子宮頸がん

健康被害裁判続く子宮頸がんワクチン 「命を守る接種」学会で相次ぐ声

動かぬ国に批判も

 子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて、国が積極的な接種呼び掛けを中止して丸六年。総合診療医、家庭医らでつくる日本プライマリ・ケア連合学会は五月、京都市でシンポジウムを開き、同ワクチンをテーマに議論した。健康被害と接種との関連を巡っては、今も裁判が続く。シンポでは、接種の必要性と副反応の治療態勢の不備について意見が相次いだ。 (編集委員・安藤明夫)

 性行為によるHPV感染を防ぐワクチンの接種は、世界保健機関(WHO)が推奨し、百三十カ国以上で承認されている。日本では二〇一三年四月から定期接種の対象になり、小学六年〜高校一年の女子は、計三回の接種を無料で受けられるようになった。

子宮頸がんワクチンについて議論した日本プライマリ・ケア連合学会のシンポジウム=京都市で

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 ただ、接種後に強い痛みが続くなどの副反応を訴える声が出たことから、国は同年六月、対象者にはがきを送るなどの接種呼び掛けを見合わせた。被害を訴えて国などに損害賠償を求める裁判の原告は百二十人を超え、各地で審理が続く中、接種率は当初の70%以上から1%未満に激減。一方、国内では年間約三千人が子宮頸がんで亡くなり、死者数は増加傾向にある。

 同学会の会員は約一万二千人。接種後に何らかの症状が出た人を診ている医師も所属している。学会は昨年末、「多くの女性が子宮頸がんのリスクにさらされたままになっている」として、国に対し、積極勧奨の即時再開を要望した。

 シンポで大きく時間が割かれたのは、副反応をどう評価するかだ。厚生労働省が昨年一月に改訂したワクチンに関するリーフレットによると、一七年八月末までに報告された副反応の疑いは、十万人当たり九十二人。うち重篤と判断されたのは五十二人に上る。

 神戸大大学院教授の岩田健太郎さん(感染症分野)は「何時間もかけてじっくり話を聞いた上で『ワクチンによる症状ではありません』と言うだけで症状が消えた例もあった」と報告。「医師が丁寧に対応していれば、ここまでこじれることはなかったのでは」とも。

 子宮頸がんで子宮を摘出することになれば、妊娠の希望もかなわない。同省のリーフレットでは、接種によって十万人当たり五百九十五〜八百五十九人の子宮頸がん罹患(りかん)を回避できると推計。自らが治療にあたるがん患者に触れ、「(ワクチンを打たないことで)多くの女性が病気になり、苦しみ、死んでいく現状は医療の敗北」と訴えた。

 ワクチンを打った人が訴える症状を、複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)の観点から説明したのは、JR東京総合病院小児科医師の奥山伸彦さんだ。CRPSとは、外傷など何かしらの疼痛刺激をきっかけに痛みや交感神経の異常が現れる状態。HPVワクチンの接種以外でも生じるとし、十代は大人に比べて経過がいいという。

 奥山さんは接種後の慢性疼痛に悩む子ども十数人を診てきた。「時間はかかるが必ず良くなる」と励ましながら、痛くても体を動かすよう勧めた結果、ほとんどが学校に戻れるまでに回復したという。問題は、検査で原因が分からないからと、副反応を「精神的なもの」と決めつけ、患者や家族に不信感を植え付けた医療側にあると指摘。「患者は行き場をなくした」として、子どもの痛みに誠実に向き合う必要性を訴えた。

ワクチンを積極的に勧めることをやめていると記した厚生労働省のリーフレット

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 医療人類学者で、国際医療福祉大大学院准教授の磯野真穂さんが挙げたのは、厚労省のリーフレットに書かれた「積極的におすすめすることを一時的にやめています」という文章だ。「国が混乱をあおっている」と指摘。「専門家だけでなく、接種対象者、保護者を入れ、どうしたら信頼を取り戻せるかを議論してほしい」と呼びかけた。

 医学界では一六年、日本プライマリ・ケア連合学会を含む十七の医学会と医会が、接種の推進を求める共同見解を出している。同省は、接種後に出た症状について、協力医療機関を全都道府県に一カ所以上設けるなどの対応をしているが、今後の方針は示していない。接種を受けるかどうか、リスクをどう判断するかは個人に任されているのが現状だ。シンポを企画した大阪医科大病院の鈴木富雄さんは「接種に関する情報提供や、副反応へのサポート体制などを学会として考えていきたい」と話した。

 

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