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考える広場

曲がり角のコンビニ

 成長一途だった小売り業界の勝ち組・コンビニが転機を迎えている。日々、新たな商品やサービスを提供し、私たちの暮らしを便利にしてきたコンビニ。その曲がり角の先にあるものとは?

 <コンビニの現況> 全国で約5万8000店が営業中で、店舗数は今も増加している。年間売り上げは11兆円を超え、小売り業種別ではトップのスーパー(13兆円)に肉薄する。

 大手3社(計5万店強)による寡占化が進む中、2月には、人手不足から無断で24時間営業を取りやめた大阪府の店主と本部の対立が表面化。値引き制限、季節食品の大量廃棄、集中出店でも店主の負担が大きくなっており、夏にも公正取引委員会が実態調査に乗り出す。

◆地域根付くルールを 高知大教授・岩佐和幸さん

岩佐和幸さん

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 大手コンビニの進出で地域経済は疲弊します。なぜか? コンビニは本部と加盟店がフランチャイズ契約を結びます。加盟店は商標使用料・経営指導料として利益に応じてロイヤルティーを東京の本部に払います。大手コンビニの場合、利益の半分以上がロイヤルティー。つまり利益の多くは東京に流出し、地元にはあまり残りません。

 店で売る弁当や総菜は域外から持ってきます。地元で作ったり、仕入れたりした商品はごくわずか。経済の循環という面から見ても、地域とかけ離れてしまっています。雇用は生みますが、ほとんどはパートやアルバイトです。賃金は最低賃金に近い水準で、都市部の店との賃金格差が広がっています。オーナー・従業員の労働環境は厳しく、現場は悲惨な状況です。

 高知県に大手コンビニが進出したのは一九九〇年代の終わりから二〇〇〇年代の初めです。ローソン、サークルK、サンクス、ファミリーマート。地元では第一次コンビニ戦争といわれました。そして一五年、最大手のセブン−イレブンが出店しました。第二次コンビニ戦争です。大手が進出する前の高知では、中小コンビニが地域色のある店を展開していました。今では大手三強の寡占が進み、他の地域と変わらない画一的なマーケットになってしまいました。

 本部と加盟店の関係は対等ではありません。適正な契約関係にするためにフランチャイズ法を整備する必要があると考えています。米国では州レベルで整備されています。かつて大型スーパーを対象にした大規模小売店舗法がありました。今はスーパーではなくコンビニの時代です。それに合わせたルールづくりが不可欠だと言えます。

 コンビニは社会インフラといわれます。ならば、もっと社会的役割を果たしてほしい。もうかりそうな所にはどんどん出店し、過当競争でつぶれる店もある。一方、もうかりそうもない所には出店しない。現状は、本部主導の利潤追求型出店です。消費者の利益にもなりません。

 対策として、条例を制定する手もあります。店が集中しすぎた場所への出店を規制し、買い物したい人がいるのに店がない場所への出店を誘導する。そうやってコンビニを地域社会に根付かせる。コンビニ業界にとっても、それによって持続的成長が可能になると思います。

 (聞き手・越智俊至)

 <いわさ・かずゆき> 1968年、兵庫県生まれ。京都大大学院修了。博士(経済学)。著書に『入門 現代日本の経済政策』(共編著)『マレーシアにおける農業開発とアグリビジネス』など。

◆24時間営業の議論を 経済評論家・平野和之さん

平野和之さん

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 コンビニは百貨店やスーパーの隙間を狙って成長してきました。一番いい立地に、ひたすら出店し続けた。それがコンビニの強みです。コンビニで買うと値段は高い。でも近くにあるから利便性が高い。週末には車でスーパーに行って安くまとめ買いをし、普段はコンビニを使うという人が多いですね。

 コンビニ本部と加盟店のフランチャイズ契約には問題があります。それでも、以前はオーナーになりたい人が多かった。大手チェーンは店主に最低売り上げを保証しています。コンビニならではと言えます。また、店主からすると、店舗の規模が小さいので売り上げが少なくても利益を出しやすいという利点もあります。

 公正取引委員会がコンビニ業界の実態調査をするようです。公取委は二〇〇九年、セブン−イレブン・ジャパンに排除措置命令を出しました。消費期限が迫った食品を値引きする「見切り販売」を不当に制限していると指摘したのです。当時はあまり注目されませんでしたが、今はネットの影響もあり、食品ロス削減法制定にあわせ、見切り販売が一部解禁されることになりました。

 今回、焦点となっているのは二十四時間営業です。世論は「二十四時間営業はいらない」という声が大勢です。確かに、必要ない人が大多数です。しかし、深夜に働いている人など必要としている人もいます。二十四時間営業をやめると昼間の売り上げが減る可能性もあります。二十四時間営業というブランド力があるから経営が成り立っている面があるのです。

 二十四時間営業をやめるという方向の議論だけではなく、続けるためにどういう方策があるのか考える必要もあると思っています。一つの方法が深夜時間帯の無人化です。韓国では、生体認証技術を活用した無人コンビニがあります。深夜時間帯の赤字を本部が補填(ほてん)するという選択肢もあります。

 コンビニは地域の防犯スポットにもなっています。女性は深夜、公園のトイレには怖くて行けませんよね。コンビニの方が安心感があります。そういう場所がなくなるのは社会的損失です。コンビニは将来、地域医療・介護拠点や役所のカウンターになっていくでしょう。官民が連携してコンビニの在り方を考える時期が来ています。

 (聞き手・越智俊至)

 <ひらの・かずゆき> 1975年、神奈川県生まれ。法政大卒。情報通信会社で小売り、流通企業への投資に従事。2000年に起業、06年から評論活動を開始。著書に『コンビニがなくなる日』など。

◆半歩先の社会を提示 日本文学研究者・ロバート・キャンベルさん

ロバート・キャンベルさん

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 日本社会の移り変わりはコンビニを通じて読み解けるのではないでしょうか。コンビニが出てきた一九七〇年代から八〇年代は、高度経済成長がピークを越えたあたりからバブル景気にかけて。その営業形態や品ぞろえは、残業や交代制などの働き方にマッチしていました。

 まずは二十四時間営業。商品でいえば、おにぎりとおでん。面白いのは日本独特の慣習である立ち読みができること。外から見える前面に雑誌の棚が置いてあり、明るい店内で読みふける客が目に入ってきます。これが人を呼ぶんですね。新しいマーケティングといえますが、実はおにぎりやおでんも立ち読みも、日本人の昔からの嗜好(しこう)や商慣習に合っていた。

 八〇年代以降は高齢化が進み、一人暮らしのお年寄りが増えました。女性の社会参画も拡大しています。スーパーよりも近く、深夜や早朝でも開いているコンビニは、すっかり地元の店として定着しました。

 最近ではコンビニで働く外国人が増えています。人口減少による労働力不足を象徴する現象でしょう。驚くのは彼らの優秀さです。私はそこに日本の未来図を見ます。第二の孫正義、堀江貴文は彼らの中から出てくるのではないでしょうか。

 そして今やコンビニは社会のインフラです。コミュニティーセンターでもある。いろんな人たちが交わる場所という意味で、日本文化の核をなす「辻(つじ)」「角」といえます。辻はこの世とあの世の境目でもあり、演劇の舞台となってきました。それは危険をはらむ場所でもありますが、コンビニはとても平和的であるのが特徴です。

 このようにコンビニは企業と社会の新しい在り方を半歩先に提示してきました。その意味で、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が約二十カ国語に翻訳されたことは興味深い。世界共通の波長に呼応するものが作品にあったということです。

 主人公の古倉恵子は十数年、コンビニでバイトを続けています。彼女は自分が規格外の人間であると自覚しており、コンビニという規格の世界に自分を沿わせることに生きる意味を見いだします。そこには実存主義を思わせるものがあります。つまり、個がどう社会に対峙(たいじ)し、存在し得るのかという問いです。個が緩やかに共存するコンビニという辻においてこそ、規格通りではない人々の生が交わるのです。

 (聞き手・大森雅弥)

 米ニューヨーク市生まれ。専門は江戸・明治時代の文学。2017年から国文学研究資料館長。テレビコメンテーターなど、さまざまなメディアで活躍。近著は『井上陽水英訳詞集』(講談社)。

 

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