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参院選「LGBT支援、語って」三ツ矢雄二さんインタビュー詳報

LGBTの人たちについて語る声優の三ツ矢雄二さん=東京都世田谷区で

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 二十一日投開票の参院選では、主要政党が性的少数者(LGBT)支援を公約に盛り込んだ。二年半前のテレビ番組で、「ゲイ」であることを公表した声優の三ツ矢雄二さん(64)=愛知県豊橋市出身=は「政治の力で解決できることは多い。公約で支援策を掲げた政党の候補者には、LGBTのことをもっと語ってほしい」と願う。インタビューの主なやりとりは、次の通り。(社会部・谷悠己)

 ― 二〇一七年一月のテレビ番組で、性的少数者(LGBT)の当事者であることを公表されました。経緯を教えてください。

 ぼくは子どもの時から何も隠していない。「男女」と言われたこともあったけど、「そうだよ」と言っていれば傷つかなかったし、いじめも仲間外れもなかった。LGBTは無口や怒りん坊のような性格の一つだと思っていた。家族や周りも気付いていたとは思うけど、自分からカミングアウト(告白)したことはなかった。

 あのテレビ番組でも、今までのように「(性的指向は)グレーゾーン」と答えることもできたのに、「どちらかと言うとゲイ」と口を突いて出てしまった。自分も六十歳を過ぎたし、兄も定年退職して家にいるから「もういいかな」と。兄が会社にいた時は影響が及んで迷惑をかけたくない気持ちがあったので。

 ―反響はどうでしたか。

 発言がニュースとして取り上げられ拡散されてしまい、ぼくの知らないところでのマイナス面もあったかと思う。今までぼくがテレビに出たら「あれ、うちの親戚だよ」と言っていた親戚が、「ゲイ」と言ったことで嫌な思いをしているかもしれない。後悔はないけど、「ごめんなさい」という気持ちはある。

 でも、その思いと、言うことで自分らしく生きられることをてんびんに掛けた時、自分らしくすることを優先したいと思った。今回も地元の新聞に載ることでかつてのクラスメートたちにもはっきり分かってしまう怖さがないわけじゃない。でも、ぼくは一度カミングアウトした以上、とことんそのポジションでやろうと決めたので。

 ―ゲイと告白したことで、変化はありましたか。

 あれ以降、行政やLGBTの団体などに呼ばれてお話することで、初めて世間と戦っている人たちと知り合いになった。カミングアウトしたことで悩み、揚げ句の果てに自殺する人までいることを知った。見えない差別を少しずつ感じるようになって、それではいけないと思った。

 講演会で質問してくれた子から「自分は男だけど学生服が嫌いなのでセーラー服を着て登校している」と言われたとき、すごく勇気があるなと感動して、そういう子たちに「大丈夫。自分の思うように生きていいんだよ」と言ってあげたくなった。ぼくの場合はカミングアウトしても「何を今さら」と言ってくれる人が多かった。去って行く人もいたけど、それだけの付き合いなんだと思うようにした。アンチなことを言われてもブロックできる強さが必要。そういう強さや確信があれば、カミングアウトしても世の中そんなに辛くはないよ、とLGBTの人たちには言ってあげたい。

 ―「LGBTシアター」と題し、LGBTをテーマにした舞台の演出もされているそうですね。

 テレビの世界では「オネエ系」のタレントが活躍して、LGBTは喜劇的に扱われているけど、その笑いの奥には、重圧感を持って暮らしている人もいるのだという真実を知ってもらうため、一翼を担いたい。自分に何ができるかと考えたとき、ぼくは子どものころから芸能界にいて、できるのは芝居だと思い、LGBTシアターを立ち上げた。今回の作品では、ニューヨークのゲイがどれだけ進んでいるのかということを見てもらいたい。率直に言ってお金もかかっているが、それ以上に伝えたいことがあるから。誰しもがカミングアウトする必要はないと思うけど、カミングアウトしても不利益のない社会になってほしい。名前が知られていて、世間的に影響力のある人のカミングアウトが増えれば、日本の環境も変わると思う。

 ―参院選では各党が、LGBTへの支援を公約に盛り込んでいます。政治に何を期待しますか。

 法律がはっきりしないと、悩んでいる人たちを救えない。東京都世田谷区や渋谷区で同性カップルの権利を擁護する制度はできたが、結婚とは違う。アメリカ(の大半の州)やフランス、台湾でも同性婚が認められている。日本でも、法律が両性ではなく同性でもいいと言ってくれたら、後は男女の結婚にならうだけ。簡単なことだ。大人同士の養子縁組は簡単にできるが、同性カップルが子どもを養子にすることには制約がある。そういうことを政治が解決できるのではないか。

 ―まだまだ、生きにくさはあると。

 カミングアウトをすれば、世間でありのままの自分でいられるかと言うと、それは違いますね。政治家には「生産的じゃない」と言われて。「じゃあ、生産性って何だ」という思いはある。少子化は国全体で話し合わなければいけない問題だが、人間には自由に生きる権利がある。

 ―「生産性がない」という国会議員の発言は、LGBTシアターの作品づくりに影響しましたか。

 独身の人や、男女のペアで子どもができない方たちをも否定している発言。LGBT以外でも障害のある方や、不自由な環境にある人も同じ人間として扱って、なるべく多くの人に恩恵をもたらすのが政治の役割のはず。LGBTシアターの作品は、男性カップルに子どもがいる設定だが、男同士であっても男女と変わらないことを理解してほしいし、それを政治が後押ししてほしい。

 ―LGBT支援のあり方は、党によって違いがあります。

 全党が同じ方向を向くのは怖いこと。有権者は、年金や待機児童の問題などに加え、LGBTの政策でも各党を比較し、投票先を決めればいい。

 ―ご自身は参院選の投票にどう臨まれますか。

 候補者にがんばってほしいという思いが強い。街頭演説でLGBTという言葉を耳にすることは少ない。政見放送や政党のパンフレットを見ない限り、どの党がLGBTを支持しているのか浮かび上がってこない。支援策を掲げている政党の人には、掲げているのだからこそ、もっと声を大にして言ってほしい。日本人の十三人に一人はLGBTの当事者だというデータもあるし、本人は違っても友だちや家族が当事者だという人も含めると、LGBTに関心のある人は多い。演説で主張してくれれば、そういう人たちを味方に付けられる。

 <みつや・ゆうじ> 名古屋市千種台中、愛知高、明治大卒。中学時代から子役俳優として活動。大学時代に声優業を始めた。アニメ「タッチ」の上杉達也役、「キテレツ大百科」のトンガリ役、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで主役を務めたマイケル・J・フォックスの吹き替えなどで知られる。LGBTの理解を訴える芝居は「LGBTシアター」と題し継続する意向。初作品「MOTHERS AND SONS〜母と息子〜」は7月26日〜8月4日、東京・池袋のサンシャイン劇場で。

 

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