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進撃のドラッグストア

(1)未来像 身近な「かかりつけ」

健康診断装置(後方)が並ぶ店内で、来店者に健康に関するアドバイスをする管理栄養士(左)=愛知県岡崎市上地のスギ薬局上地1丁目店で

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 二〇三X年のお正月のこと。急に三歳の娘が熱を出した。時計を見ると深夜の一時。「うーん、どうしよう…。あ、そうだ!」。慌てて最寄りの店に駆け込んだ。店員さんに症状を伝えると、すぐにピッタリの薬を勧めてくれた。「あぁ助かった。あした、お医者さんに診てもらったら、今度はしっかり薬を処方してもらおう…」

 舞台は二十四時間で営業する、想像上のドラッグストア。滑らかに対応する店員は実は、人工知能(AI)を駆使したロボットだ。

 次の場面は平日の昼間。やって来たのは、七十代の男性だ。

 「おや? 今日は少し顔色が悪いですね。これはどうですか」。ロボ店員は顔を見ただけで、すぐに体調を分析し、引き出しからすっと栄養剤を出してくれた。健康面の情報から、薬やサプリメントを使った履歴までしっかり管理してくれているので、安心だ。

 「正月疲れかな」と考えながら談話スペースをのぞくと、なじみの面々が顔をそろえていた。いつもたわいのない話に花が咲く。これが楽しみだから、ドラッグストア通いがやめられないんだよなぁ−。

 ここまでの想像、決して現実離れした夢物語とは言えない。例えば、スギ薬局(愛知県大府市)は、二十四時間営業の店舗や、客が自由に使える談話スペースを置く店を増やしている。そのスペースでは、脳年齢や血管年齢、骨密度などを調べられる機器がタダで使え、薬剤師や管理栄養士に「血圧を下げるにはどんな食生活をしたらいいの?」などと気軽に相談もできる。

 「かかりつけ医」から「かかりつけ薬局」へ。重くない病気は一般薬を使う。病院の代わりにドラッグストアに通うという考え方は、国の施策にものっとっている。膨らみ続ける医療費を減らすためだ。健康を保つ役割もドラッグストアが担いつつある。

 流通アナリストの渡辺広明氏は「AIの薬剤師や管理栄養士が来店者の健康や栄養状態を把握し、心のケアは人間が担う、ということは十分考えられる」と将来を予測する。

 ドラッグストアの市場は急拡大を続け、小売業界を席巻している。一七年の売り上げ規模は七兆円弱。あと数年で手が届きそうな十兆円は、コンビニを猛追するほどの規模だ。

 店舗数は全国に約二万店。これはコンビニ最大手のセブン−イレブンとほぼ同じ数。一気に身の回りに同じ会社の店が増えた、という印象を受けるのは、一つの地域に集中して店を出す「ドミナント戦略」が業界の定石だから。近年は年間で五百店以上がオープンし続けていて、まだまだ増えていく。

 医薬品や化粧品で得たもうけを使って食料品を安く売り、客を呼びこむ。これが、ドラッグストアの急成長を支えてきたビジネスモデルだった。そして、生活必需品から生鮮食品まで幅広く扱ったり、健康や美容を強く打ち出してちょっとお高い商品をそろえたり。品ぞろえも店ごとで多様化している。

 ただ一つ、今後ますます「生活インフラ」の一部として、さらに身近で欠かせない存在になっていくのは間違いない。

   ◇

 長引く消費低迷に悩む小売業界の中で、近年、最も勢い良く伸びているドラッグストア。数年後には十兆円産業になることを視野に入れている。百貨店、大型スーパー、コンビニエンスストアと、小売業は人々のニーズに応えて品ぞろえや業態を変化させてきた。時代とともに主役が入れ替わってきた中で、躍進するドラッグストアは新たな「王者」となるのか。取り巻く情勢を追う。

 <ドミナント戦略> 一定の地域に集中的に出店する手法。その地域で一気に認知度を上げられるために宣伝効果が高く、地域の特色に合わせて商品構成をそろえたり、物流コストを抑えたりできる点でも効率化が図れる。「ドミナント」は英語で「支配的な」「有力な」などを意味し、各社が国とり合戦のように出店速度を競う背景にもなっている。

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