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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 遅筆を自認した作家井上ひさしさんは若いころ、締め切りを破るたびに、言い訳をひねり出していた。風邪や腹痛では足りなくなったようである。<大家が家賃の値上げを申し渡しに来ましたので、それは強欲だと喧嘩(けんか)になりまして><大家の夫婦の大喧嘩の仲裁に入り…>などと言い訳を量産した

▼<大家を悪者にしておけばたいてい事が済んだ>(『ブラウン監獄の四季』)という。大家さんのいる間借りが身近だった時代である。いい大家さんがいる一方で、金にうるさかったり、おせっかいがひどかったり。<悪者>にしやすいタイプもいて、言い訳は説得力を持ったようだ

▼振るわぬ経営も落ちた企業のイメージも、たいていのことは大家ならぬかつてのカリスマ経営者のせいにしていれば、少なくとも世間に対して説得力があったのだろう。日産自動車である

▼カリスマ経営者のゴーン氏が去って時が過ぎている。再建のためには、いつまでも「ゴーン氏が悪い」は通用しまい。西川(さいかわ)広人社長が、辞任に追い込まれた

▼ことあるごとにゴーン氏を厳しく批判してきた人であるが、数千万円も上乗せされた報酬を受けていたことが明らかになった

▼報酬増への関与は否定しているという。人員削減を強いられている企業で、再建に必死の人たちの心情を考えれば、辞任はしかたあるまい。通用する言い訳はあまりないだろう。

 

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