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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 夏目漱石は『野分』の中で、激しい風を描写している。<風がくる。垣の隙(すき)から、椽(えん)の下から吹いてくる。危ういものは落ちる。しきりに落ちる>

▼野分は台風などがもたらす強い風の古い呼び名だ。清少納言や吉田兼好もこれについて書き残した。立春から数えて二百十日から二百二十日あたりに吹くという。二百十日は今月の一日だったから、まさしく野分の時期に来た激しい風だ。首都圏などを襲い、死者も出した台風15号である

▼千葉市などで観測史上一番の最大瞬間風速を記録した。民家の屋根を突き破ったゴルフ練習場の柱、折れた電柱…。家の中にまで吹き込み、危ういものが空から落としてくるような猛威の跡をニュースで見ている

▼鉄道の計画運休で会社勤めなどの人には、大変な一日となっている。駅などで起きた大混乱は、こんな台風が来た場合の通勤をどうするのかという問題を新たに世の中に投げかけているようだ

▼昨年の同じ時期には、関西を中心に大きな被害をもたらした台風21号が上陸している。規模や被害が大きくなっていると感じざるをえない近ごろの台風である。怖さについての常識を毎年書き換えられているようにも思えてならない

▼家づくりは「夏を旨とすべし」と徒然草で書いたのは吉田兼好であるが、これからの心構えも、今回のような激しい台風を旨とすべきであるのかもしれない。

 

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